リンク 「評価 B」
大学生のジェーンは、アルバイトとして数日間フィリップ教授の研究を手伝うこととなった。海岸沿いの自宅に数頭のチンパンジーを飼っている教授は、彼らに教育を施すことで人間並みの知能を与える研究を行っていた。ジェーンは教育されたチンパンジーたちの賢さに驚きながらも、研究の手伝いを難なくこなしていった。ところがある日、自宅から教授の姿が消えた。彼の身に何か起こったのではないかと、不安になるジェーン。やがて彼女は、チンパンジーの一匹・リンクが不穏な行動をしていることに気づく…。
人間に牙を剥く動物には二種類いる。一つは人間に慣れていない(もしくは、慣れることができない)ために人間を敵と見なした動物。もう一つは人間に慣れ、人間を自分と対等かそれ以下の存在と見なすようになった動物である。ペットとして飼い慣らされている動物は人間に慣れてはいるが、飼い主よりも地位が下であることを確認させられているが故に決して飼い主に牙を剥こうとはしない。だが少しバランスが狂うと、たちまちペットは豹変して人間に牙を剥くのだ。
さてこの映画では、教育によって人間を対等の存在と見なすようになったチンパンジーの恐怖が余すところなく描かれている。最初は従順だったリンクが次第に命令を聞かなくなり、最終的に牙を剥く。映画ではここまでの過程をじわりじわりと迫るように進行させていき、観る者の緊張を高めていく。そしてリンクが人を殺していたことが判明するカットで作品のテンションは最高潮に達し、後はジェットコースターが急降下していくかのように、物語はジェーンとリンクの追いかけっこに突入するのである。しかしこの追いかけっこの間も、陰で暗躍するもう一匹のチンパンジー・インプの存在によって、観ている側の頭には単純な暴力とは異なる不安感が付きまとうこととなる。更にそれが終わっても最後の最後には後味の悪いラストが待ち受けており、結局のところリンクが反抗の鱗片を見せた辺りからラストまで、緊張の糸の切れる暇すらない。持続する不安感が堪らない、恐怖映画の佳作だ。
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