キングコングの逆襲             「評価 A」
北極に埋蔵されている放射性物質・エレメントXを採掘するため、悪の科学者ドクター・フーは伝説上の巨大霊長類・キングコングをモデルにしたロボット・メカニコングを開発した。ところがいざ採掘を行ってみると、エレメントXが埋まっている地帯は磁力が強く、全身金属のメカニコングではすぐに動作が停止してしまうことが明らかになったのである。エレメントXをアジアの某国に売りつけて大儲けしようとしていたのに、予想だにしない事態を前に困り果ててしまうドクター・フー。とそこへ、国連科学委員会が本物のキングコングを発見したとのニュースが入ってきた。「よし、メカが駄目なら本物だ!」と考えたドクター・フーは南海の島までヘリを飛ばし、キングコングと国連科学委員会のメンバー三人を北極の基地まで連れてきた。機械によって催眠術をかけられ、エレメントXの発掘作業に取り掛かるコング。しかしエレメントXの放射能を浴びた途端、コングの洗脳が解け、怒り狂ったコングは基地を抜け出してしまった。北極から一路東京へと向かうコングを追うべく、ドクター・フーはメカニコングを出動させるが…。
「キングコング対ゴジラ」に続く、東宝のキングコング映画第二弾。前作で二大スターによる怪獣バトルをダイナミックかつスピーディーに演出した東宝は、今度はメカニコングなど多彩なライバル怪獣が登場してキングコングに挑んでいく、見せ場に富んだ非常に楽しい怪獣活劇を作り出した。
まず序盤では、南海の孤島におけるキングコングとゴロザウルスや巨大海蛇との死闘が大きな山場となっている。中でもゴロザウルスは着ぐるみ怪獣にしては珍しい恐竜らしさに拘ったデザインで、その造形美には目を見張るものがあるが、それよりも度肝を抜かされるのが戦闘開始直後に二連続で放つドロップキックだ。肉食恐竜そのものな体型からは想像もつかない攻撃方法で、しかもその後にちゃんとバランスをとって着地するのは色んな意味で凄い。そして中盤の国際科学委員会メンバーによるスパイアクションばりの活劇が終わると、最後の山場としてキングコングとメカニコングとの東京を舞台にした激戦が始まる。ここではビルを突き破って現れるメカニコングや、東京タワーに上った両者の戦いが見所だ。共にクライマックスに恥じない迫力に満ちた画作りがなされており、興奮のあまり手に汗握ること必至である。
一方でこの映画、人間ドラマも見逃すわけにはいかない。事件の中核として暗躍する工作員をボンドガールの浜美枝が熱演しているのもポイントだが、最も注目すべきは天本英世演ずるドクター・フーだ。ドクター・フーは世界各地で悪事を重ねている国際犯罪者のくせに、エレメントXの周りを取り巻く磁界を計算していなかったり、捕虜を入れた牢屋の檻を開けっ放しにしたりと、肝心なところで間が抜けているのがチャーミング。このどこか憎めない悪役ぶりは天本英世の怪演によって一層強く押し出され、作品中で只ならぬ存在感を放ち続ける名キャラクターとなっていた。
怪獣バトルも満喫できれば、人間側の演技も素晴らしい。文句なしに楽しめる、娯楽映画の傑作だ。
(余談であるが、本作の公開は「ゴジラ対メカゴジラ」より七年も早い1967年だ。つまりメカニコングは怪獣をモチーフにしたロボットの第一号なのである)
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