月光仮面 「評価 D」
81年、東京。新興宗教ニューラブカントリーは犯罪組織レッドマスク団を名乗り、各地で強盗行為を行っていた。今日も彼らによって東朋銀行の金庫が襲われ、5億円もの大金が奪われる。ところが彼らがトラックで奪った金を運んでいた途中、一台のバイクがトラックの前を遮った。バイクに跨るは、白いタイツにゴーグルという怪しい風貌の男。「月光仮面」と名乗る彼は、華麗な身のこなしで瞬く間にトラックの荷台から大金を奪い去っていった。かつて幾度にも渡って日本を救ったヒーローが、数十年の時を経て現代に蘇ったのである…。
私はかつて、月光仮面に嵌った人間である。勿論本放送を見ていたわけではないが、再放送された月光仮面を見て、川内康範先生独特の子供向けとは思えないハードで手の込んだ内容に瞬く間に虜になったものだ。さて、本作はそんな月光仮面を80年代初頭に再び映像化した映画なのだが、その頃には既に、月光仮面はキャラや主題歌がよく知られているのに内容の方は全くといっていいほど知られていない作品となっていた。それを蘇らせるのだから、かつて熱狂していた世代には親しみ易く、一方で子供たちも夢中になれるような映画を目指す(もしくは、どちらかにターゲットを絞る)のが当たり前だろう。ところが本作の製作者は何をトチ狂ったのか、オリジナルのファンも子供たちも寄せ付けない、誰をターゲットにしたのか分からない実に奇奇怪怪な作品を作り上げてしまったのだ。
まず本作の月光仮面は道交法を気にしてか、覆面だけでなく白いヘルメットまで被っている。そのためオリジナルに比べるとカッコ良さが大幅にダウンしており、オリジナルのファンなら落胆すること請け合いだ(事実、私がそうでした)。更にオリジナルでは月光仮面に扮する名探偵祝十郎が平常時でも超人的な活躍をし、「同一人物によるダブルヒーロー」という妙な味わいがあったのに対し、本作で月光仮面に扮する青年は平常時、下っ端戦闘員ごときにボコボコにされたりと全くいい所が無い。また月光仮面が全国的にブームになって月光仮面の格好に扮したバンドがディスコで演奏するなど、作品の至るところでセンスを外したネタが散見されるのもオリジナルのファンとしては悲しくなってくる。
また子供向けとしては本作、内容がハードなのはオリジナルを踏襲しているからいいとしても、月光仮面が活躍する場面が少なすぎるのはさすがに死活問題だ。話の殆どが新興宗教内部の人間描写に費やされ、月光仮面はいざという時に現れて悪役退治をするだけ。
二時間弱という長編でありながらヒーロー活劇としては見せ場があまりにも少なく、とてもじゃないが子供の観賞には耐えられない。
結局のところ誰に見てもらいたかったのかがさっぱり分からない、非常に困った作品だった。
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