クローン人間ブルース・リー 怒りのスリー・ドラゴン 「評価 B」
ブルース・リーが死んだ! しかし特殊機関SBIは彼の超人的身体能力に目を付け、その遺伝子から三人のクローン人間を作り上げたのである。それぞれブルース・リー1号、ブルース・リー2号、ブルース・リー3号と名づけられた彼らは、SBIの戦士として香港やバンコクに潜む悪党を退治するように命じられた。ただでさえ強いブルース・リーが三人もいれば、リー・チャームも三倍で向かうところ敵なし。悪党どもは成す術もなく、尽くブルース・リーの拳とブルース・リーの蹴りとブルース・リーの機転によって倒されていった。ところがある日、彼らを生み出した博士が狂気に走り、ブルース・リーとブルース・リーとブルース・リーに「誰か一人になるまで闘え!」とバトルロイヤルをするように命じたのだ。博士の洗脳装置により、何の疑問も抱かずに殺し合いを始めるブルース・リーとブルース・リーとブルース・リー。果たしてブルース・リーはブルース・リーとブルース・リーに殺されてしまうのだろうか!?
ブルース・リーのそっくりさん三人による夢のコラボレーションが実現した、偽ブルース・リー映画の愛好家にとっては垂涎モノの怪作。クローン人間という設定なのに全員身長も顔立ちも肉付きもバラバラな時点で爆笑必至なのだが、それに加えてストーリーの方も常人の発想を遥かに超えた次元に達しており、これを観て笑うなという方が無理なほどに凄まじい内容である。
まず香港の悪徳映画プロデューサーとブルース・リー1号が戦う話では、1号は彼に近づくために、新人のアクション俳優として彼が作っている映画の撮影現場に乗り込む。しかし1号はブルース・リーのクローンという設定であり、たとえ映画を観ている我々にはそう見えなくても、顔立ちと体つきはブルース・リーと完全に同一のはずである。なのに現場の監督達は、ブルース・リーと同じ顔の彼を見ても全然不思議に思わず、「うん、なかなかいい筋をしている」と呑気なことを言っているのだ。しかもそうやって褒めた直後、彼の素性が明らかでないことを知るや否や1号を殺すように命令したりと、プロデューサー達の理解不能な行動は止まらない。嗚呼、誰かこいつらを止めてくれ…と思っていると、やっとのことでプロデューサーはブルース・リー1号に倒されるのだった。
そしてこれが終わると、今度はバンコクの怪しい博士と戦う2号と3号の活躍に移る。かつてブルース・リーの映画にヒートアップしたオヤジが本作を観たら、あまりもの酷い内容に別の意味でヒートアップすること請け合いだが、このバンコク編ではビーチではしゃぎ回る全身ヌードのお姉さん達が出てくるので更に別の意味でヒートアップすることだろう。さてそんなことはいいとして、今回の敵である博士は人間の体を青銅に変える、驚くべき薬を開発した。薬を注射され、生まれた青銅人間の数は九人。「少林寺十八銅人」の半分しかいないが結構強いらしく、2号と3号とSBIのエージェントの三人がかりで闘っても全く歯が立たななった。そこで三人は一旦撤退して、策を練ってから再挑戦するのだが、その策というのが「毒の草を食べさせて殺す」という卑怯にも程がある壮絶なもの。クローン人間として再生されたブルース・リー、残念なことにプライドだけは再生されなかったようである。おまけに再戦の場面は、ブルース・リー達が青銅人間の口に毒の草を押し込んで無理矢理食べさせるところが、どう見ても青銅人間が自分から毒の草を食べているようにしか見えないという代物。見ていて脱力せずにはいられない迷場面である。
更に最後の対決では、ヌンチャクを振り回したと思ったら即行で投げ捨てて素手で戦ったり3号が殺人光線を浴びて即死したりと、これまで以上に仰天な展開が見られる。まず「ブルース・リーのクローン」というコンセプトで笑い、次にクローンの微妙なそっくりさん具合で笑い、そしてストーリーで笑う。全編笑いづくめの、愛すべき馬鹿映画だった。
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