遊星よりの物体X 「評価 B」
北極近くに謎の飛行物体が落下し、周囲の磁場に影響を及ぼしていた。そこでアメリカ軍のヘンドリー大尉達が現場に向かってみたところ、氷に埋もれた巨大な円盤を発見した。早速円盤を掘り出そうとして火薬を使用したものの、爆発の勢いが強すぎて円盤は四散してしまった。仕方が無いのでヘンドリー達は円盤の破片の中に転がっていた、氷漬けの物体だけを基地に持ち帰ることにした。ところが氷が解けるや否や、その物体は一人でに動き出して基地から逃走した。なんと物体の正体は、動物の血を吸って成長する野菜人間だったのである。ヘンドリーはこの物体の存在に脅威を感じて抹殺することを決めたが、基地にいたカリントン博士はこれを偉大な発見とし、物体の保護を主張した…。
ジョン・W・キャンベル・Jrの「影が行く」を、西部劇でお馴染みのハワード・ホークスが映画化した作品。密室で知恵を凝らして怪生物と戦う、今となっては有り触れたタイプのSF映画だが、本作のミソは脚本にある。映画内に於いて「物体」は一言も話さず、その真意が最後まで明らかにされないのだ。そのため物体が動き出してからのストーリーは、「地球に侵略しにきた宇宙人をアメリカ軍が退治する話」と「偶々地球に落ちた宇宙人が人間や犬にリンチされて殺される話」との、どちらにも受け取ることができるようになっている。そのため対極の意見を持つヘンドリーとカリントンの両方に感情移入が可能で、実に上手い脚本だと感心させられてしまう。「キングコブラ」や「サーベルタイガー」のような、「怪物の保護を主張する科学者=悪役」としている映画に辟易している人にはぜひ観てもらいたい映画である。
GO TO TOP!!