ブルーレトロ1930            「評価不可能」
エロ映画。その歴史は古く、映画の誕生からまだ間もないうちに、男女の情事を映した映画が既に何本か撮られていたという。リュミエール兄弟が生まれ育った国フランスでもこのようなエロ映画は盛んに作られており、30年代になると5〜8分ほどの短編エロ映画が大量に撮影&上映されていたそうだ。これらの映画はアングラな性格も相俟ってか時の流れと共に大半が消失し、今となっては殆どが現存していない有様となっている。しかし80年代半ばになって、この頃のフランス製エロ映画のフィルムが何本か発掘された。それらを繋ぎ合わせて一本の映画にしてしまったのが、この作品「ブルーレトロ1930」である。
そんな本作は何に置いても各エロ映画の内容が壮絶で、「倦怠期の夫婦が若いカップルの性交を見て全盛期の心を取り戻し──」とか、「女子生徒の尻を叩いていた女教師がやがてサディスティックな快楽に目覚め、生徒と情事に耽っていたところへ男の教師がやってきて──」とか、書いているこちらが恥ずかしくなるようなベッタベタなシチュエーションばかりが続く。本来ならば間違いなく大笑いしているような凄まじい内容なのだが、無声映画のため台詞などは全てテロップで表示され、バックには常に軽快で優美な音楽が流れており、映画からは何故か異様なまでに高尚っぽい雰囲気が漂ってくる。そのため笑うにも笑えないどころか、微妙に気まずい空気が感じられてしょうがないのだ。中でも特に強烈だったのが、本作の中で二度ほど挿入されている30年代のエロアニメだ。黎明期のディズニーアニメを思わせる顔をしたキャラクター達が楽しそうに交わりあう様は、一種の悪夢と言ってもいいだろう。
一度観たら棺桶に入るまで忘れることができない、異常なまでの衝撃を秘めた作品である。
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