ヘルクラッシュ! 地獄の霊柩車 「評価 C」
不動産業を営んでいるメルビンは車で家路を急ぐ途中、前方に一台の霊柩車を見つけた。霊柩車はノロノロ走っているくせに蛇行運転していて、追い越そうとしてもなかなか追い越すことができない。腹を立てたメルビンは霊柩車から離れるべく別の道を進むが、何故かそこでも同じ車種の霊柩車に行く手を阻まれた。これは偶然なのか? と不思議に思ったメルビンは、霊柩車が止まったのを見計らうと、自分も車を降りて霊柩車に歩み寄ってみた。するとその荷台には、自分の名前を刻んだ棺が積んであったのである…。
「真昼の用心棒」「サンゲリア」の監督として知られるルチオ・フルチの遺作は、後ろからではなく前方を進む車によって圧迫感を味わわされる、「激突!」と正反対のシチュエーションで繰り広げられるサスペンス映画だ。時間の異なる同一の場所を入れ替わり映していく冒頭を始め、徐々に伏線が積み重なっていく中盤、そして全てが一瞬で解決するラストと、構成に関して言えば申し分ないのに、要となるはずのカーチェイスが緊迫感に欠けており、どことなく間の抜けたような作品になっていた。この緊迫感を削いでいる最大の原因は、メルビンと霊柩車の運転手に何度も会話させている脚本にある。会話シーンのおかげで圧迫する者に対する不気味さが取り払われ、作品自体がサスペンスではなく不条理モノとしての色を強めてしまっているのだ。またラストで流れる陽気な音楽も場違いとしか思えず、サスペンス崩れといった印象の作品だった。
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