スクワーム 「評価 S」
海岸沿いの田舎町フライ・クリークを、大規模な雷雨が襲った。その被害は凄まじく、何軒かの家が破壊されただけでなく、町に電気を供給する送電線までもが切断され、嵐が去った後も住民らはしばらくの間、停電に苦しむこととなったのだ。しかし、本当の災害はここから始まった。切断された電線は地面に触れ、地中へ十万ボルトの電気が流れ込んだ。その影響で地中に眠っていた何百万匹ものゴカイたちが地上に這い出し、フライ・クリークはゴカイだらけになってしまったのである。おまけにゴカイは電流によるストレスで凶暴化しており、次々と住民らを襲い始めた…。
だいぶ前に真昼間のテレビ東京で放映されていたのを観たっきり、長年「忘れたくても忘れられない映画」として私の記憶にこびりついていた作品。最近になってようやく見直す機会に恵まれたが、やっぱり今観ても本作の持つパワーには圧倒されてしまう。何て言ったって、釣り餌でおなじみのゴカイが何百万匹も集まって、庭を、シャワールームを、寝室を、天井をびっしりと埋め尽くすのである。特に無数のゴカイが川のような一定の流れを作って動き回っていたり、ドアを開けると高さ二メートルまで積みあがったゴカイの塊がドバーッと流れてくるる場面なんかは、ナメクジ映画「スラッグス」と肩を並べるグロパニック映画の最右翼としての貫禄を感じずにはいられない。他にも見せ場は充実しており、ゴカイが顔を食い破って体内に侵入してくるカットや、シャワーの蛇口からところてんのようにゴカイが出てくる有名なカットなど、観る者を嫌な気分にさせる場面がてんこもり。本作を観た後は、しばらくスパゲッティが食べられなくなるのは必至と言ってもいいだろう。
本作に於いてゴカイの大量発生はあくまで自然現象として扱われており、ゴカイを退治するシーンが無いので、パニック映画としては些か地味に感じられるかもしれない。だがその分本作では、失恋した田舎青年ロジャーの存在が光っている。都会からやってきた骨董好きの青年ミックに愛するジェリーを奪われてしまった彼は、映画の中盤でゴカイに顔を食われて行方不明になってしまう。しかしロジャーは全身ゴカイまみれになりながらもミックへの復讐心のみで生き続け、クライマックスでは醜悪なゴカイ男となってミックに襲い掛かるのだ。彼の執念の凄まじさはゴカイの沼に飲み込まれても根性で這い上がってくるほどであり、ミック達でなくても戦慄せずにはいられない。田舎の閉ざされた社会が生み出した、実に恐ろしい登場人物であった。
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