合衆国壊滅M10.5 「評価 A」
シアトル市街地、カリフォルニア北部と、アメリカ西部を南下するように大規模な地震が立て続けに発生した。大統領は地震の原因を探るべく、「追い詰められたら大博打を撃つ男」ロイ・ノーランに命じて何人かの科学者を集めさせたところ、ヒル博士がアメリカ西海岸沿いに未知の断層があり、それが原因で地震が発生したのではないかという意見を述べた。更にヒル博士は二つの地震は始まりに過ぎず、次はサンフランシスコの中心部を地震が襲うとまで予測したが、断層の存在自体が仮説に過ぎないので、他の科学者たちは彼女の話を笑い飛ばすだけだった。ロイにもこの予想は到底信じられず、ヒル博士に「自説に自信があるなら証拠を集めてこい」と言いつけた。そこで山奥の荒地を歩き回り、証拠となる物を懸命に探すヒル博士。その甲斐あって地下から毒ガスが湧き上がっているのを発見したが、これ位では未知の断層があるとロイ達を納得させることはできなかった。そうこうしている間に、いよいよ地震がサンフランシスコを襲った。金門橋は崩れ落ち、何台もの車が海の中に転落する大惨事となった。こうして間に合わないながらもヒル博士の説は実証されたのだが、博士の予測では地震はこれだけに留まらず、このままでは更に南の地点で新たな地震が発生するということだった。この連鎖を止めるためには、核爆弾によって地中深くの断層を砕くしか無い。そこでロイはアメリカ軍を指揮して、ヒル博士の指定したポイントに次々と核爆弾を埋めていこうとしたが…。
本作は地震の連鎖を食い止めようとする人々の活躍を描いたTVムービーだ。核爆弾で断層を破壊するというプロットがまんま「ディープ・コア」シリーズな他、自説を認められない科学者というありがちな構図、ズームイン&アウトを多用したくどいカメラワークや、映画が終わりに向かうにつれて希薄になっていく人間ドラマなど、色々と問題な点が多く、とてもじゃないが良作とは呼べない映画である。
しかし、しかしだ。私はこの映画を観終わった時、感動の余り大きな虚脱感に襲われ、しばらくその場を動けなくなってしまった。今まで何十本もの地震映画を観てきた私が、こんな経験を地震映画で味わわされたのは当然初めてのことである。そう、それだけ本作には尋常じゃない物が秘められていたのだ。
何が凄いって本作、地震一つ一つの描写に全くと言っていいほど手抜きが感じられない。自転車で疾走する男を様々な障害が襲うという形で展開する冒頭のシアトル地震。郊外を走る列車を追いかけるように地割れが伸びていき、やがて列車が飲み込まれるまでをスリリングに映した第二の地震(何故地割れが線路に沿って伸びていくのか? という疑問はさておいて、列車の乗客を画面に出さなかったのは予算の都合もあるだろうが、人間を写さなくても災害の恐怖が伝わってくることをまざまざと見せつけているので良し)。金門橋が崩れていく様子をスローモーションで写した第三の地震(橋の上の車が一瞬宙に浮くなど、やたらと芸が細かい)。そして地震映画史上稀に見るほどの大規模な被害を出した最後の地震(ちょうど「エスケープ・フロムL.A.」の冒頭部分をじっくりと映したような感じと言えば、どんなものか想像がつくだろう)と、TVムービーとは思えないシーンの連続に終始震えが止まらなかった。地震以外のシーンでも、平地で避難民のテントが地平線の向こうを埋め尽くさんばかりに広がっていたりと、全編スペクタクル魂に溢れた本作。パニック映画には何よりもこういう精神が必要だと思い知らされた作品だった。
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