人間人形デッドドヲル             「評価 A」
芸術家志望の男、ライリーの部屋には一体のダッチドールがいた。あまりにも精巧に作られたそのドールには、見た者の心を魅了し、たちまち虜にしてしまう恐ろしい魔力が秘められていた。当然ライリーもドールから離れることができず、部屋に篭っては毎日のように淫靡な行為に明け暮れていた。ところがある日、彼の部屋を訪れた宅配業者の男がドールに魅せられ、ライリーを殺してドールを盗み出してしまう。かくして外に出たドールは多くの人の目に触れることとなるが、魅了された人間には必ず破滅の運命が待ち受けていたのである…。
このページでは御馴染みのブランド「アルバトロス・コア」が放つ、めくるめく倒錯の世界を描いたフェチ系ホラー映画の傑作が登場だ! ドールを手に入れた者達がリレー方式で不幸に陥っていく、成年版「レッド・バイオリン」とも言うべき内容のこの映画。平凡な生活を送っていた人達がドールを見たことで狂気に落ちていく恐怖も然ることながら、妄想と現実の入り混じり方が実に良い具合なのである。話が進むにつれて、所有者がドールに抱いた妄想が次第に現実の場面に侵食してくる。ダッチドールが所有者と会話をしたり、物を食べたり、買い物に出かけたり…。これが「キラーバージン」のような作品だと、どこまでが現実なのか曖昧なまま終わらせて奇妙な余韻だけを残すのだが、この映画ではそのような妥協が一切行われていない。映画の進行に併せ、自ずと現実と妄想の境目がはっきりしてくるように作られているのだ。様々な人物が移り変わり登場するリレー方式の上、各所有者の妄想まで混じってくる複雑なプロットを、破綻無く纏め上げた本作の脚本にはただただ感心するばかりである。敢えて不満を言うならば、ダッチドール誕生の秘密が引っ張りすぎに感じられたことぐらいだろうか。正直引っ張るほどの秘密だとは思えず、話を遮ってまで種明かしをする必然性に欠けるように思えた。だがそれでも一切の無駄な人物描写を省いた構成は巧みだし、80分とない時間で多彩なエピソードを盛り込んでしまったのには驚嘆せざるを得ない。
あまりに嗜好性が強いので健全な人にはお勧めしかねるが、とにかく色んな意味で濃厚なホラー映画だった。
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