ファング 異形生命体 「評価 C」
アメリカ某所の遺伝子研究所では、放射線を浴びた一匹の猫に注目が集まっていた。一見すると普通の猫なのだが、レントゲンで見ると、その体内には全く別の生物が宿っているようなのである。この生物の正体を探るべく、猫を檻から出す研究員。だがその時、突然猫の口がパックリと割れ、中からネズミとライオンを掛け合わせたような姿の怪生物が飛び出してきた。研究員は怪生物の鋭い牙を受け、大量の血を流して死んでしまった。そして怪生物は再び猫の体内に潜り込み、研究所から姿を消した。所は変わり、フロリダの海岸。グラハム・ウォルターら犯罪組織が、大金を手に国外逃亡を謀ろうとしていた。ところが彼らの乗るクルーザーに、あの猫が乗り込んできたのである。怪生物は機会を見ては猫の口から飛び出し、次々と船上の人間を血祭りにあげていく。異変に気づいた者が無線機を使って助けを呼ぼうとしたが、警察に捕まることを恐れたグラハムによって無線機は破壊されてしまった。かくして外との連絡が取れなくなった彼らは、一致団結して怪生物から身を守ろうとするが…。
近年怪物の誕生原因として定番となっている「遺伝子操作」と、かつての原因の代表格だった「放射能」。87年製作の本作では怪生物の誕生原因を、遺伝子操作を前提とした放射線照射という新旧を混合したようなものにしており、モンスター映画の歴史の流れを微かではあるが垣間見ることができる。さて、こうして誕生した怪生物は造形とギミックの両方において見事な出来で、普段は猫の体内に隠れているというアイデアも秀逸である(恰も「文字通り猫を被る怪物だ」と突っ込んで欲しいかのようだ)。これで猫の正体が人々に気づかれないまま進行したらサスペンス的要素も出てくるのだが、本作では正体が割とアッサリ発覚し、以後怪生物が隠れる意味がなくなってしまうのが少々味気ない。また怪生物への気合の入り方に対し、その他の特撮部分はまるでパッとせず、別の映画を観ている様な気分にさせられるのも難点。怪生物の毒にやられた人間の腹が異様に膨れるカットは、腹部と顔の色が全く違うので偽物だと丸分かりだ。クルーザーが沈没するシーンは、近所の模型屋で買った船が水槽に沈んでいるようにしか見えない壮絶な出来である。怪生物が只ならぬ魅力を放っていただけあって、非常にもったいなく感じられた映画だった。
GO TO TOP!!