ムーンウォーカー              「評価 C」
皆さん御存知、少年大好きスターのマイケル・ジャクソン。途方もない財力で私設遊園地ネバーランドを作り、愛する少年少女と思う存分遊べるようにした彼は、また自分の金で自分を主役に据えた映画も作っていた。それがこの映画、ムーンウォーカーである。
本作、徹頭徹尾マイケルのオレ映画なものだから、マイケル教団の洗脳フィルムと言っても差し支えの無い、実に恐ろしい構成になっている。映画はまずマイケルのライブ映像に始まり、それから彼の少年時代からのミュージック・クリップが延々と流される。私個人としてはこの中に「ベンのテーマ」が出てきたことが感慨深かったものの、まあそれはいいとして何時までも何時までも続くクリップの嵐。その時間なんと四十分弱。これだけマイケルのヒット曲がひっきりなしに流されれば、観客は否応無しにマイケルという人間に惚れ込んでしまう。洗脳フィルムとしては上手い手法だ。そして観る者の頭脳にマイケルの素晴らしさがインプットされたところで、いよいよ本編が開始される。
話の舞台はマイケルによるマイケルのためのマイケルの楽園。野原で仲良しの子供達と遊んでいたマイケルは、ひょんな事から悪の秘密結社のアジトに迷い込んだ。そこで麻薬漬けにした蜘蛛をばら撒き、世界中の子供達を麻薬中毒にしようという彼らの陰謀を耳にしたマイケルは、秘密結社から命を狙われることになってしまう。霧のかかったスラム街で、マシンガンで武装した彼らから逃げ回るマイケル。追い詰められ、絶体絶命の大ピンチ。ところがここはマイケルの楽園、全てがマイケルの都合通りに動いてくれる世界だ。夜空に浮かぶマイケルの星が光り輝くとき、マイケルの体はいかしたボディのスーパーカーへと変身を遂げるのである。マイケルスーパーカーは爆音と共に発進し、悪の包囲網を難なく突破した。これに怒り狂った秘密結社のボス。マイケルと仲良しの少女シンティを誘拐し、人間の姿に戻ったマイケルを誘き寄せた。シンティを人質にとられ、怒りに震えながらも身動きが取れないマイケル。周りを銃で武装した連中に囲まれ、またもや絶体絶命。だがその時、再びマイケルの星が輝いた。またもや変身を始めるマイケル。今度の体は全身にレーザー砲や磁気バリア、連発式ミサイルを搭載した鉄の城、マイケルロボだ! 「貴様らの髪の毛一本とてこの世には残さん!」と言わんばかりに、秘密結社の連中をビームやミサイルで虐殺していくマイケルロボ。彼らの放つ銃弾は全て磁気バリアが防いでくれるので、戦いは完全にマイケルのものだった。こうしてザコどもの掃除を終えたマイケルロボは、突如宇宙船に変型して大空に飛び上がった。だが秘密結社のボスは巨大なビーム兵器に搭乗しており、そんなマイケルへと狙いを定めていたのだ。危ない、マイケル! しかしビームが発射される直前に宇宙船マイケル号はそのことに気づき、ボスをビーム兵器ごとあの世へと葬ったのである。かくしてマイケルは、マイケルの楽園を汚す悪者どもをやっつけた。仕事を終えた宇宙船マイケル号は目的地をマイケルの星に定め、遥か銀河へと飛び去っていった……かに思えたが、何故かその直後にマイケルは仲良しの子供達の前に現れた。「素敵な場所に連れて行ってあげよう」という言葉に誘われ、マイケルと共にスラム街の店に入っていく子供達。そこで彼らが見たものとは──。
このように映画本編は、「子供に暴力を振るう大人は皆殺しにしてしまえ」というマイケルの過激な思想が存分に伝わってくる内容だ。冒頭で教祖の功績や偉大さを伝え、次第に危険思想を刷り込んでいく。これを洗脳フィルムと言わずして何と言うべきか(笑)。アイドル映画の皮を被った宗教映画、それがこのムーンウォーカーの実像だった(個人的には死ぬほど笑わせてもらったので評価はCです)。
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