スーパーストーム 「評価 D」
オクラホマ州の小さな町が、F5クラスの竜巻によって丸ごと壊滅した。観測所の職員ジェンセンはこの災害で愛する妻を失い、更に観測ミスが原因で住民の避難が遅れたことを責められ辞職。娘のカーラを義母に託し、知人のいない遠くの町へと移り住んだ。それから十年後、ジェンセンは警察官になっていたが、犯人一人逮捕するのに何台もの車を破壊することで上司からすっかり呆れられており、クビになるのも最早時間の問題だった。そんなある日、ジェンセンはカーラの卒業式に出るために休暇をとり、久々に故郷の町に帰ってきた。かつての職場仲間や義母と再会を喜ぶジェンセン。しかしカーラだけは自分を置いて遠くに行ったジェンセンを酷く憎んでおり、決して彼と打ち解けようとはしなかったのである。何とかしてカーラと仲直りしたいと思うジェンセンだが、その頃ケイシーと名づけられた雷雲が渦を巻き、十年前と同じレベルの竜巻を町に発生させようとしていた…。
地下シェルターの中で竜巻の通過を待つ際、人々は飛ばされないように互いに身を寄せ合う。竜巻映画では度々見られる光景だが、この時生じる人間同士の連帯感に着目し、これを人間関係を円滑にするための薬として使用したのがこの映画である。主人公のジェンセンはこの「身の寄せ合い」によって、最近知り合ったばかりの女レポーターと急に仲良くなったり、娘とのギクシャクした関係を解消してしまったりと、トントン拍子で人間関係をより良いものにしていく。どちらも段階を積んで互いの信頼を築いていくような描写は殆どなされておらず、本当に「身の寄せ合い」だけで一気に仲良くなっているのだ。あまりに突然なものだから、「僕も以前は妻を亡くしたショックで女性と上手く付き合えなかったけれど、一度竜巻に飛ばされないために身を寄せ合ったらびっくりしたよ。急に美人と付き合えるようになったし、反抗的だった娘も僕に心を開いてくれたんだ。こりゃあもう竜巻様様だね!」なんて通販番組っぽいジェンソンの台詞が頭に浮かんでしまったぞ。さて本作、この点を除けば目新しい所は全く無い、普通の竜巻映画である。竜巻の進路に細菌研究センターがあり、早く細菌を片付けないと竜巻でばら撒かれて大変なことになる…というアウトブレイク的要素も取り入れられているが、細菌を片付けるシーンも実にあっさりとした描かれ方でいまいち緊張感が湧いてこない。他の要素が平凡な分、「身の寄せ合い」の絶大な効用に一層大きなインパクトを感じた作品である。
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