アースブレイク 「評価 C」
ニューヨーク郊外のダイヤモンドバック山では、爆薬を使って住宅地の開発が行われていた。ところが現場責任者のスチュワートが事前の地盤調査を怠っていたものだから、山は衝撃に耐えられずに地滑りを起こしてしまう。大量の土砂が山肌を滑り落ち、麓のマンションに覆いかぶさった。幸いにもマンションの住民達は一命を取り留めており、消防士のマークを始め、こそ泥のハロルドやマークの義父らは外部と連絡を取って救助を待つ。だがその頃、地上ではスチュワートが自分の失敗を隠すために新たな爆弾を使おうとしていたのだ…。
たかだか田舎町で土砂崩れが起こるだけの話なのに、「アースブレイク」とはまた大げさな邦題である。一瞬あの「世界崩壊の序曲」を思い出してしまったが、あっちは原題の時点で羊頭狗肉だったのでまだいい。しかし本作の原題は「LANDSLIDE」という内容を忠実に表したものであり、「アースブレイク」は明らかにプライムウェーブ社の誇大広告による邦題である。たとえ同じタイトルの映画が既にあるからと言って、こんな邦題にしては観客の期待を裏切ることになるだろう(ちなみにパッケージも枯れ果てた地面に自由の女神像が埋まっているという、終末を想起させるデザインになっている)。さてそんな事はいいとして、本作は「業者の不正で被害を受ける一般市民」という、つい最近の「コンバッション」でも見られた実にありがちなプロットである。また土砂崩れのシーンのVFXも、一応及第点ではあるが美麗とまではいかない出来で、それほど褒められたものではない。一方で本作の良い所はというと、1つのテーマを明確に打ち出すことで話のまとまりを良くしている点が挙げられるだろう。作品を観れば分かるとおり、この映画のテーマは「家族愛」である。マークの義父は仕事に没頭するあまり家族を蔑ろにした過去を悔やんでおり、同じ仕事人間であるマークに自分の二の舞を演じて欲しくないと思っている。しかしマークは、たとえ他人とはいえ「家族を助けてほしい」と懇願してくる人々を放って置けない性格であり、だからこそ消防士という仕事に誇りを持っていたのである。本作ではこの二人の対立を軸とし、その脇に何時までも更正しないハロルドを思いやる姉、マンションに生き埋めになっている身重の妻を案じる男を添えることで、本当に家族を思い遣るとはどういう事なのかと観る者に問い掛けているのだ。事件の解決を急ぐ余り、結果としてマークと義父の対立が未消化に終わった感があるのは残念だが、「家族愛」という下手すれば陳腐になりそうなテーマに真っ向から挑んでいる作品である。
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