生体兵器 アトミックジョーズ 「評価 D」
アメリカ西海岸のアクロ海洋研究所では、鮫の脳にチップを埋め込んで自在に操ろうとする研究が行われていた。ところがその成果を軍の上層部に見せる日になって、施設内で飼っていた六匹の鮫が、何者かの手によって外の海へと逃がされてしまった。科学者のコリンズ夫妻は鮫を回収するために研究所を飛び出したが、この事件の裏には軍の陰謀が隠されていた…。
「レッド・ウォーター サメ地獄」から一年、遂に鮫映画の新作が登場した。これは観るしかない! …と気負いこんで観賞したものの、本作は今までの作品と比べると、何かが物足りないように感じられた。思えばこの映画、最近の傾向に倣ってVFXを多用しており、撮影に生身の鮫が一切使われていない。それだけならまだいいのだが、鮫が海中に人を引きずりこんでも血が全く流れず、また鮫が殺される場面でもカット割りで流血が映らないようにしている。要するに本作、スプラッター描写が慢性的に不足しているのだ。「ジョーズ」シリーズは勿論のこと、「死海からの脱出(ジョーズアタック)」や「ジュラシック・ジョーズ」など、鮫映画と言ったら当たり前のように血みどろのシーンに溢れていた。これが「シャーク・ハンター」のように殆ど怪獣同然な鮫だったら違和感も無くなるのだが、本作の鮫はごく普通のホオジロザメであり、しかも定番通りに海水浴場を襲うシーンなんてあるものだから、流血描写の無さにどうしても違和感を覚えてしまうのである。更にVFXも稚拙で、金門橋が映るカットなんかは今日び「デスパイザー」ぐらいの作品でないと拝めない酷さである。将軍が登場するシーンで御大層な音楽が流れたり、研究所長がチビであることをネタにした場面がこれでもかと出てきたりと、全編コメディ調な雰囲気で纏められているので観終わった時の感じは非常にスッキリしているが、それでも「輪投げ」の伏線の生かし方など、ギャグで済まされない箇所が多いので良い点はあげられない。あらゆる点でどこかが抜けている、穴だらけの鍋のような作品だった。
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