キラー・アンツ 巨大殺人蟻の襲撃         「評価 D」
イラクから貨物船で密輸されてきたプルトニウムを、FBI捜査官が取り押さえた。しかし押収できたプルトニウムの量は最初に船に積まれた量よりも明らかに少なく、FBIは消えたプルトニウムの行方を追う。一方その頃、同じ船に積まれていた観葉植物がアメリカの植木屋に運ばれ、やがてそれはオフィスビルに売られていった。続々とビル内部に運び込まれていく観葉植物。ところがこの観葉植物には密輸犯によってプルトニウムが染み込まされおり、植木の土にいた蟻たちはその影響で巨大化しつつあったのだ。そして全長1メートルほどまでに大きくなった蟻は植物を離れ、ビル内の人間を血祭りに上げていった。清掃員のジョアンは異変に気づき、雑誌編集者のシャロンらと共にビルからの脱出を図ろうとするが…。
植木屋とオフィスビル以外の場所が全く画面に映らない、スケールダウン版「放射能X」。CGで描かれた蟻は暗いシーンを多用することで違和感を減らしており、また各登場人物も個性に溢れ生き生きとしているのだが、いかんせん脚本や演出の欠陥が目立ち、パニック映画としてはお世辞にも褒められたものではない作品だった。何よりも本作、オフィスビルからの脱出過程が無茶苦茶である。蟻の襲撃をかわしながらビルの屋上に出て、数名が隣のビルに移るところまではいいが、その後はジョアン達の移動過程がこれでもかと言うくらいに省略される。そして気が付くと、ジョアンは屋上からビルの地下にまで移動しているのだ。丸腰の彼がどうやって蟻と戦ってこんな場所まで来たんだ、と観客が疑問に思っても決して説明がされることは無い。クライマックスでも再びジョアンの移動過程が省かれ、彼は一瞬でビルの玄関にまで来てしまう。そのため「あと二分でビル全体に殺虫剤が撒かれる。急いで脱出しないと!」というタイムサスペンスが盛り上がりに欠ける代物になっていたのはどうしたものか。終始緊張感に欠けた、凡作の域を出ない映画である。
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