マグニチュード8.5 「評価 B」
或るアメリカの会社が、ロシアのカスルスクに建てられた原子力発電所へ資金提供をする事を決めた。そこで社員のジョシュが発電所へと赴いたのだが、そこには元妻のレイチェルの姿が。彼女はエンジニアとしてここで働いていたのである。気まずい顔を浮かべるジョシュだったが、その時カスルスク全土をマグニチュード8.5規模の大地震が襲った。あらゆる建物が崩壊し、街は瓦礫の山と化す。更に悪いことに一番近い貯水池にひびが入り、原子炉への冷却水の供給がストップしてしまった。瞬く間に温度を上げていく原子炉。このままでは数時間としないうちにメルトダウンが起こりかねない。レイチェルは考えた末、地下鉄のトンネルを水路代わりに利用し、10km離れた別の貯水池から水を持ってくる案を立てるが、その頃トンネルではジョシュ達の娘のシェリーが、地震による崩落で身動きが取れなくなっていたのである。シェリーの兄ディランはジョシュと協力し、トンネルに水が来る前に何とかシェリーを救出しようとするが…。
「バラバラになった家族がよりを戻す」という、パニック映画の定番と言うべき内容の本作。だが家族の一人一人にバラバラの役割を振り分け、互いに合流したり分かれたりと目まぐるしく状況を変えることで絆を浮かび上がらせる構成が上手く作用しており、最後まで観る者の心を捉えて放さないのは見事と言うほか無い。たとえ基本プロットは定番通りでも、見せ方を工夫すれば十分に楽しめるという好例である。またディランにバイクを貸す友人や原発の各スタッフなど、本作は家族の構成員以外でも魅力のある登場人物に溢れており、特にトンネル内でシェリーと行動を共にするホワイト先生は、とても教師とは思えないほどの慌てぶりが人間臭くて個人的に好印象だ。それとこの映画、B級モンスターパニック映画を数多く手がけている会社「NU IMAGE」によって作られたのだが、そのためか災害シーンにおけるVFXのクオリティの高さは相当なもの。崩落するハイウェイや地下鉄の脱線横転といったカットのリアルな描写が、家族ドラマ中心でパニック描写に欠けがちな本作に彩りを与えているのだ。レイチェルの考えた案が説得力に薄かったり、クライマックスのシェリー救出が明らかに時間がかかり過ぎだったりとパニック映画としての不備は結構あるが、全般的に見れば丁寧に作られている印象がする良作である。
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