地獄のニンジャソルジャー         「評価 B」
時に冷戦の真っ只中、アジアの或る国では東と西の小競り合いが続いていた。とりわけ敵陣営の情報を掴むための諜報合戦が盛んであり、いつしか両陣営は諜報活動に際し、この手の仕事のプロであるニンジャ軍団を雇い入れることとなった。西陣営が雇ったのは反共の証である白を基調とした装束を纏う、その名もホワイト・ニンジャ部隊。東陣営が雇ったのは共産主義の象徴とも言える真っ赤な色をした装束を首領が纏う、その名もブラック・ニンジャ部隊。本作はこんなニンジャ合戦の渦中にある国を舞台とした、ハイパー・ニンジャ映画である。
ジェニーは幸せの絶頂にいた。姉のマリーが今日結婚式を挙げるのである。相手はホワイト・ニンジャに所属する好青年のロビン。ところが式場に向かう途中、軍の機密情報を掴んでいたロビンはブラック・ニンジャによって拉致されてしまった。おまけにマリーまで殺され、あっと言う間に絶望の底に沈むジェニー。彼女は何としてでも復讐してやると決意し、ホワイト・ニンジャの首領であるアルフレッドに弟子入りを志願するのだが…。
こ、これは凄い! 話のデタラメさではトップクラスに君臨するニンジャ映画だ! まず何と言ったって、アルフレッド師匠が施す修行が凄い。「素人がニンジャになろうなど片腹痛いわっ!」と一度はジェニーをボコボコにするのだが、それでも諦めようとしないジェニーを見て弟子入りを認めた師匠。そして始まる試練というのが、他のニンジャ映画ではお目にかかれないような実にトンチキなものだったのである。ニンジャになるための試練を、順を追って見ていこう。

ニンジャのために その壱「背中と胸に刺青を彫るべし」
アジトの一室で、ジェニーの背中に薔薇の刺青を彫ったあと、胸にも蜂と龍の彫り物をしていく師匠。だが薔薇はともかくとして、蜂や龍の刺青は物凄く下手糞だ。こんな彫り物されたら、私なら恥ずかしくて町を歩けないぞ。もしかしてこの恥ずかしさに耐えるのが修行なのか? …と思ったら、そこへ師匠のとんでもない一言が飛んできた。
「痛みに耐えたのち喜びが来る」
そうか、これはSMプレイの一環だったのか! と早合点しそうな台詞だが、その後の師匠の説明によると、どうやら刺青はホワイト・ニンジャに所属している証らしい。でもロビンを始め、ホワイト・ニンジャの他のメンバーが刺青をしている様子はない。やっぱりSMプレイだったのでは…?

ニンジャのために その弐「身のこなしを磨くべし」
アジトの庭で、宙返りや側転、トンボ返りの練習をするジェニー。ここは割とマトモな修行なので書くことが無い。

ニンジャのために その参「サイコロをマスターするべし」
師匠の前で、サイコロタワーの練習をするジェニー。サイコロタワーとは六つのサイコロをコップで掬い、軽く振ってテーブルの上に置くとサイコロの塔ができているというアレのことだが、ジェニーはサイコロを縦にL字型に並べるなど、より高度な技術を磨いているようである。でもこんな事してニンジャの修行になるのかと思っていると、師匠は言う。「危険な賭けをするな。人を傷つけるために自分の身を危険に晒すようではいかん。人を傷つけずに勝つことを学ぶのだ」成程、賭け事を通じてニンジャの有り方を教えていたのか…っておい! サイコロタワーを練習した意味はまるで無いじゃないか!

と、意味があったのか無かったのかも分からない数々の試練を掻い潜り、晴れてジェニーは免許皆伝となった(画面を見る限り、入門からここまでの間は二、三日しか経ってない。ホワイト・ニンジャも余程人手不足なのだろう)。師匠は彼女に、ニンジャとして活動する時のコードネームを与える。その名もズバリ、「狂った蜜蜂」! ううむ、狂った蜜蜂……。団鬼六の小説のタイトルにありそうな名前だ。とても若い女性に付ける名前とは思えない。師匠のセンスは我々常人には理解しがたいものがあるなあ。…なんて思っていたら、免許皆伝の場面から五分と経たずに師匠はブラック・ニンジャの罠にかかって壮絶な爆死を遂げてしまった! その後もジェニーが幽霊を操って敵から情報を得たり、武器を持たないチンピラ達をショットガンで皆殺しにしたり、何の脈絡も無く黒幕と賭博合戦を始めてあっと言う間に負けてヤケ酒をあおったりと、奇奇怪怪抱腹絶倒な場面がこれでもかと出てきて、観る者を悉く混乱させる。素晴らしい程にトリップ感覚を味わえる映画である。
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