デスパイザー                 「評価 B」
イラストレーターのゴードンは不幸のどん底にいた。仕事をクビになり、ヨメに逃げられ、乗っていた車は事故に遭い、そのショックで見知らぬ世界に飛ばされ、挙句にゾンビの大群に追い回されていたのである。ここは何処なのか、何故こんな場所に来たのかも分からずにただ逃げ回るゴードン。ところがそこへ救いの手が差し伸べられた。銃火器で武装した集団が現れ、ゾンビ達を一掃してくれたのである。彼らが言うには、ここはこの世とあの世の境目にある煉獄であり、今は宇宙から来た謎の生物デスパイザーによって支配されているらしい。デスパイザーは自らの力によってゾンビを生み出し、別世界まで勢力を広げようとしたのだが、あの世の神達はそれを許そうとはしなかった。現世で常人以上の力を持っていた者の魂を集め、デスパイザーを倒すために煉獄に派遣したのだ。しかしゴードンはあの世で選ばれたわけでもない、ごく普通の人間である。何故こんな場所に来てしまったのか分からないままだったが、彼の事を知ったデスパイザーはゴードンこそ異世界へ飛ぶ能力を持っている男に違いないと確信した。かくして不幸なゴードンは、デスパイザーにその身を狙われることとなったのだ…。
底なしに不幸な男の冒険譚とも言うべき作品だが、何よりも目を引くのは煉獄の描写だ。煉獄において遠景や建物が美麗とは程遠いカクカクのCGで描かれており、特に木なんかは殆ど「緑の円錐+茶色の円柱」状態で、画面だけ見ると「いつの映画だ!?」と思わずにはいられないショボショボぶりなのである。しかしこれが、映画を通して見るとさほど違和感を覚えないから不思議なものだ。思うにこの映画、徹底してゲーム的演出に拘ってみたかったのではないだろうか。銃火器でゾンビを倒していき、ゾンビを産むデスパイザーの城を目指していくというプロットは実にゲーム的だし、映画としては稚拙極まりないVFXもゲーム画面と思って見ればさほど技術が遅れているようには感じられない。下手に美麗なCGを描こうとしてボロが出るよりも、いっそ簡略化したCGで描いた方が手間が省けるし、何より「ゲームらしさ」が出てくる。そう考えれば本作は実に効果的にVFXが使われており、またストーリーの方もゴードンの不幸を前面に押し出しながらも破綻無く進行してくれる上、武装集団のメンバーもそれぞれのキャラが立っており(特に元カミカゼ隊員のフミ・トマサワはインチキ日本人ファン必見の名キャラだ!)、この手の映画が好きならきっと満足のいく娯楽作となっていた。
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