4Dマンの恐怖 怪談壁抜け男 「評価 B」
科学者スコットが開発した装置。それは電磁波によって四次元世界への扉を開け、別々の物体を同じ場所に置けるようにするというものだった。この装置の威力を実演するために、自ら実験台となるスコット。鋼鉄の塊に手を突っ込んだり、街頭のショーウインドウをすり抜けたりと、何度も四次元世界に入り込んでみせた。しかし科学の常識を越える体験は、彼の体に予想以上の負担をかけていた。一晩のうちにスコットの容貌はどっと老け込み、見るも哀れなほどに変わり果てていたのである。幸い他人の体内を擦り抜けて生気を吸収すれば若返ることができると知ったスコットは、四次元の男「4Dマン」として夜な夜な人間を襲い続けるのだが…。
壁抜けに対する考察から誕生した、SF版吸血鬼とも言うべきモンスター「4Dマン」。本作はスコットをこんな怪物にしてしまうまでの顛末を悲壮感たっぷりに描いており、どこか古典ホラーを思わせるような作風になっている。科学者として着実に成功を収めていく弟のトニーに対する焦りや、恋人リンダとトニーとの三角関係、研究の成果を急かす上司のカーソンへの反抗心と、スコットの周りにはストレスの材料が溢れており、これらを払拭するためにも彼は危険な人体実験に挑まざるを得なかったのだ。しかし実験に成功したのも束の間、気づいたら彼は人間関係を捨てて殺人鬼となるしか道がなくなっていた。そして映画のクライマックス、怪物と化したスコットとリンダが対峙する場面で各登場人物のテンションは頂点に達する。その後の人を食ったようなラストは好き嫌い分かれそうなところだが、現実を突きつけられたスコットの哀愁をより強調させたものとして私は評価している。
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