ウイラード               「評価 A」
青年ウイラードはストレスの溜まる日々を過ごしていた。亡き父が作った会社ではマーティン現社長から毎日のように要領の悪さを責められ、一方家では「なんで出世できないんだ」と病床の母や親戚一同から責められていたのである。周りに理解者がおらず、一人もがき苦しむウイラード。そんなある日、庭の掃除をしていたウイラードは一匹の孤独な白ネズミに遭遇する。自分を重なる鼠の姿に愛おしさを覚えたウイラードは、この鼠にソクラテスと名づけ大切に育てることにした。ところが孤独から抜け出せないでいるウイラードと違い、ソクラテスは家の地下室を根城として、黒ネズミのベンを初めとして瞬く間に仲間を増やしていたのだ。彼らネズミ達にソクラテスを奪われていくような気がしたウイラードだったが、ネズミ達が自分の言うことを聞いてくれることを知ると、彼らを操ってマーティン社長のパーティーを台無しにすることを思いついた。そしてパーティー当日、草むらに隠れたウイラードはネズミ達を解き放ち、会場になだれ込ませた。パニックに陥る会場を見て、満足げな顔を浮かべるウイラード。しかし黒ネズミのベンは錯乱した人間達に踏み潰されていく仲間の姿を目の当たりにし、何とも言えない憤りを感じていたのである。その後、ウイラードは母親が病死したことによりますますソクラテスを溺愛するようになった。会社に行く時もソクラテスをカバンの中に入れ、片時も離れようとはしなかったのだ。だがある日、会社の倉庫にいたソクラテスは社員に見つかり、駆けつけたマーティン社長の手によって無残にも殺されてしまった。その場に居合わせながらも、唯一無二の友が殺されるところを黙って見ているしか出来なかったウイラード。酷く悲しんだ彼は復讐を誓い、その日の夜にベン達を率いて会社にやってきた。そして彼らを操り、仕事をしていた社長をあっと言う間に抹殺したのである。だが復讐を果たしたその時、ウイラードは自分がとんでもない事をしてしまった事に気づいた。ベン達を会社に置いて家に逃げ帰ったウイラードは、地下室にいたネズミ達を全て溺死させて事なきを得ようとする。これからベン達が戻ってくることなど思いもよらずに…。
「ラッツ」や「ファングス」など、今尚コンスタントに製作されているネズミ映画の原点である本作。しかしネズミを汚らわしい烏合の衆として扱っている最近の作品に対し、本作では青年の孤独を描くためか、ソクラテスの愛らしさやベンの人間臭さが殊更に強調されており、明らかに雰囲気の異なる内容になっている。その分知性を持つネズミの不気味さが一層強く感じられ、単なる生理的嫌悪感以上の恐怖を感じさせてくれるのだ。ネズミが人を襲うシーンが少ないので最近のモンスター映画と比べると些か物足りなく感じられるが、恐怖映画としては一級の作品である。
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