地獄のジョーズ '87最後の復讐       「評価 B」
ワニ映画に「モンスター・クロコダイル」、熊映画に「ワイルド・グリズリー」があるように、鮫映画にも動物を守る立場の人間を主人公に据えた作品があった。それがこの映画である。
アメリカの小さな港町に、スタインという名の変わり者がいた。鮫と意思疎通ができるという不思議なペンダントを持つ彼は、湾内の鮫と親しくなり、餌を与えて共に生活していたのである。だが他の人間にとって鮫は危険な存在であり、彼らは次第に数を増やしていく鮫に対し賞金を出そうと言い出した。この話にスタインは強く反対し、「みんなが鮫を恐れるのは鮫のことを知らないからだ。鮫の生態を知ればみんな考え直すに違いない」と考えて、研究所や酒場のショーに鮫を貸し出すことを決めた。ところが鮫を預かった者達は、鮫を大事に扱わなかった。科学者らは研究のために鮫を解剖し、ショーの運営者も鮫に高周波の音を聞かせて苦しめていた。その実態を知ったスタインは憤激し、鮫に代わって彼らに天誅を下す…。
鮫を苦しめる人間を、残忍な方法で殺しまくるこの映画。少し加減を間違えれば「ワイルド・グリズリー」のように人間のエゴに満ちたものになりがちな構図だが、本作ではスタインに鮫と意思疎通ができる能力を与えることで、見事に孤独な男の悲劇として昇華させていた。スタインにとって、鮫は親しい友人である。しかし鮫が大人しいのはあくまで彼に対してだけで、他の人間が鮫と一緒に水槽に入ろうものなら、たちまち襲われてしまう。よって客観的に見れば鮫を退治しようという町の人間の方が正しいのだが、本作では更にレジャーとして鮫を殺す者、研究や金儲けのために鮫を虐待する者を登場させ、鮫を守ろうとするスタインにも感情移入ができるようになっているのだ。
また人が鮫に襲われるシーンでは、本物の鮫と人間を特殊効果無しで共演させており、彼らの気合いの入った演技も見物である。無数にある鮫映画の中でも、一際個性を感じさせてくれる作品だった。

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