ザ・ピラニア 殺戮生命体      「評価 D」
海水中でも泳ぎまわれるピラニア。そんな物ができたら敵対勢力を殲滅する兵器として非常に役立つだろう。そう考えたアメリカ軍は、一人の科学者に命じてピラニアの遺伝子研究を行わせていた。だが冷戦が終わり、ピラニアに存在意味が無くなると、軍は科学者にピラニアの処分を命じた。こうして新種のピラニアは闇に葬られたかに思えた。ところがこの科学者は山奥に研究所を構え、冷戦が終わった現在においてもピラニアの研究を続けていたのである。しかも人探しのために研究所を訪れた二人の男女によって水槽が開け放たれ、無数のピラニアが川に流された! 海水を目指して、物凄いスピードで川を下るピラニア達。それを知った科学者は二人の男女と一緒に、ピラニアを追いかけるのだが…。
あの「ピラニア」をロジャー・コーマンが現代風にリメイクした本作。ピラニアを開発する目的が第二次大戦用の兵器から冷戦用の兵器に変わっている辺りに時代の流れを感じさせてくれるが、総じて見ると「ピラニア」に比べて演出やサービス精神が1ランクダウンしており、オリジナルを越えているとはお世辞にも言い難い映画だった。
例えば本作、映画監督志望の青年と彼に取り入ってスターになろうとする女が新たなキャラとして追加されているのだが、中盤で女がピラニアに襲われた途端、生き残っているはずの青年までパッタリ登場しなくなる。彼が次に登場するのは話に全て決着がついてからのことで、結局「何のための追加キャラだったんだ?」と首を捻らずにはいられない。
またオリジナルのクライマックスであるパニックシーン二連発も、メリハリのない演出のおかげで迫り来るピラニアに対する緊張感が薄れ、せっかくの大盤振る舞いがまるで生きていないのだ。
しかし本作、「ピラニア」における最大の不満要素だった「廃液の毒を受けたピラニアが死ぬシーン」がちゃんと描かれており、体を張って頑張った主人公にも少しは救いがある結末になっていた。ピラニアの大群が水中を進むシーンをオリジナルの使い回しで済ましていたりと、相変わらずロジャー・コーマンお得意のやっつけ仕事ぶりがひしひしと感じられるものの、このラストの変更だけでも、本作はリメイク版として価値があると言えるのである。

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