世界崩壊の序曲 「評価 D」
南の海に浮かぶ小さな島。ここでは石油採掘に勤しむ者、リゾートを楽しむ者、ホテルを運営して大金を稼ぐ者、様々な人間が己のしたいことに没頭していた。だが島の中央に聳え立つ火山が、やがて噴火の予兆を見せ始めた。観測所の者達は島の人間らに警告するが、彼らは自分の執着していることから離れようとはしなかった。そうしている内に遂に火山は噴火し、南の楽園は瞬く間に崩壊する。溶岩と津波を辛うじて免れた人々は高台に建っているホテルに避難したが、降り注ぐ火山弾を見た一部の人間はこのままではホテルも危険だと察し、難を逃れるために島の反対側に向かおうと主張した。しかしホテルのオーナーがホテルの安全さを主張し、多くの人々も彼の言葉に従った。そこで僅か数名の人間で、島の反対側へ出発することになるのだが…。
映画をより多くの人間に見てもらうため、何でも無いような映画に誇大広告がなされることがしばしばある。数名の人間しか出ない小規模なモンスターパニック映画に「人類と○○、生き残るのはどっちだ!?」などと謳い文句をつけるのはその典型と言えよう。
しかし、このような誇大広告のなされた映画は数あれど、宣伝のハッタリ具合に関して言えば本作に勝る映画もそうそう無いように思われる。と言うのも本作、「ついに始まった世界最後の日!」などと大げさに宣伝コピーしていながら、その実態は一つの島の火山噴火を扱っただけの、誠に世界観の狭いパニック映画だったのだ。しかも原題からして「When time ran out...」なんて人類の終末を連想させるようなものになっており、決して日本の配給会社だけが勝手に誇大広告したわけではない。それどころか日本の配給会社は邦題に「序曲」と付けることで「人類は滅亡しませんよ」ということを予め観客に示しており、むしろ製作者達の誇張を抑えているような印象さえ受ける。普段誇大広告をバンバンしている日本の配給会社ですら誇張を躊躇ってしまうほど、本作の羊頭狗肉度は著しかったのである。
そんな本作は、話がまんま「ポセイドン・アドベンチャー」な上、作品の主役であるはずの火山や津波も安い感じが滲み出ていて迫力に欠けていた。また前半でドロドロした恋愛模様を散々見せておきながら火山噴火の後もそれらが全く修繕されることはなかったり、溶岩が流れる谷を吊り橋で越えて行くクライマックスはスタジオ撮影丸出しな代物で緊張感の欠片も無かったりと、誇大広告との落差以前にパニック映画としても不出来に思えた。
映画の終盤、ホテルを一瞬で焼失させてしまう火山弾の描写は悪くなかったが、その他についてはいかんともしがたい映画だった。
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