スパイダーマン 「評価 D」
青年ピーターは放射線の実験を行っていた際、放射能を浴びた蜘蛛に噛まれてしまった。だがその日からピーターは蜘蛛の能力を得た超人スパイダーマンとなったのである。ちょうどその頃、街では洗脳された人々が自殺を起こすという事件が多発していた。事件のバックに新興宗教の影を見たスパイダーマンは、街の平和を守るために彼らに立ち向かう。
40年以上も息の長い人気を保ち続け、70年代ではアメリカでTVドラマとして放映されていたスパイダーマン。それを編集して三本の映画に仕立て上げ、日本で劇場もしくはビデオで公開されたのが本作を始めとする「TVムービー版スパイダーマン3部作」である。
元がTVドラマなので色々と予算の都合とかもあり、サム・ライミの劇場版と比べると可哀想になるくらい安っぽい空気が漂っている本シリーズ。能力に目覚めたピーターが建物の壁を這うカットは合成がしっかりしていないため、凸凹している箇所を恰も平面であるかのように動き、どう見ても宙に浮いている有様。スパイダーマンが壁を攀じ登るカットもワイヤーの動かし方が下手で、壁に張りついた手足が勝手に上昇して行くというニュートンも真っ青の現象が起こっている。と本作は全編こんな感じで、その脱力感と言ったら半端なものではない。
また、予算の都合であまり特殊効果が必要な悪役は出せないため、本作では新興宗教の教祖に仕える3人の用心棒がスパイダーマンの仇敵となる。微妙にアジアンテイストの漂うこの連中、竹刀を携えていてなかなかの腕っ節らしいが、所詮はごく普通の人間である。蜘蛛の力を得て超人化しているスパイダーマンのことだからこの程度の小者は楽勝に違いない…と思ったがどっこい。なんとスパイダーマンは深手を負わされ、一旦惨めにも敗北してしまうのだ。弱い、絶対に弱い、スパイダーマン! しかもクライマックスではピーターが敵組織にまんまと洗脳されてしまい、エンパイアステートビルの屋上から投身自殺させられそうになる。ところが偶然にも彼の頭を支配していたバッジが柵に引っかかって取れてしまい、あと一歩のところでピーターは正気を取り戻すのである。
御都合主義がヒーローの特権とはよく言うが、この投身自殺は本作品中においてスパイダーマンが唯一ピンチに陥る場面だ。そんな重大なところがこのような機転もへったくれも無い方法で免れてしまうとなっては、観ている側としては非常にげんなりせざるをえない。
スパイダーマンが放つ糸が本物の蜘蛛の糸じゃなくて手首のウェブシューターから発射される粘着性のロープだったりと、妙な部分で原作の設定に忠実なのが嬉しいものの、スパイダーマンのヘタレ加減と盛りあがりに欠ける展開があんまりな映画であった。
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