殺人魚フライングキラー             「評価 C」
遺伝子操作によって誕生した人食いトビウオが、ふとした手違いによって海の中に投げ捨てられてしまった。トビウオは沖合いの海底にあった沈没船を拠点として数を増やし、浜辺でリゾートを楽しんでいる観光客らに襲いかかる…。
砂浜のリゾート地を水棲モンスターが襲う…というプロットの映画は山ほどあるが、こと浜辺が面しているのが湖や沼でなく海の場合、これらの映画の主役となっているのは大抵鮫で、一旦陸にあがってしまえば後は無事というパターンが多い。
しかし同じ魚類であっても、本作のようなトビウオだったらそうはいかない。彼らは小さな羽をパタパタさせて何十メートルもの内陸部まで平気で飛んで来て、人間を襲うとまた海まで戻って行ってしまうのである。一回着地してしまうと体の構造上もう飛べないから、勿論その間トビウオは休むことなく羽ばたきっ放しだ。恐るべき(というより無茶な)滞空距離だが、「遺伝子操作」という天下無敵の単語が観客を否応無しに納得させてしまう。そんなトビウオが海の陸の境界線を文字通り飛び越えて、海に足を踏み入れてすらいない観光客達の首に食らいついて行く姿はまことに痛快であると言えよう(その代わり本作のトビウオ、海中を泳ぐ速度が異様に遅いのが玉に傷だ)。
しかし本作、トビウオのインパクトに反して話の方はかなり適当である。途中から行方不明になる主人公の息子とその恋人は、何時トビウオに襲われるのかと散々観客達をやきもきさせておきながら、結局最後まで話に何ら関わってくることはなかった。またこの手の映画の最大の山場であるリゾート地へのモンスター襲来による阿鼻叫喚の地獄絵図も、トビウオが去った後のリゾート地の様子がそれほど映し出されていないので風情に乏しく、観ていてかなり味気ない。
人食いトビウオ以外の点に関しては、凡作の域を出られない映画である。
(それにしても本作、かのジェームズ・キャメロンの初監督作である。人に歴史ありとはこのことを言うのだろう)

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