サイレント・ワールド          「評価 D」
彗星の衝突によって北半球が氷に閉ざされた未来。世界の主な機関は南半球へと移されており、衝突の際に北半球に残された人々は既に全滅しているだろうと見なされていた。だが衝突から数年後、動作を停止させていた一つの人工衛星が突如として動き出した。この人工衛星は電磁波を放つことで気象を操れるというもので、動かせるのはベルリンにあるコンピューターだけである。果たしてベルリンに人間の生き残りがあるのだろうか? と思ったのも束の間、衛星は地表にある政府機関の建物へ照準を合わせた。このままでは48時間後、衛星が放つ電磁波によって建物は愚か、周辺一帯が消滅してしまう。そこで政府は人工衛星の活動阻止と生き残りの捜索のため、ベルリンに小部隊を派遣した。
パッケージを見れば一目瞭然だが、「デイ・アフター・トゥモロー」に便乗して製作された本作。しかも単なる「似たジャンルの映画」という域を越え、なんと変動後の地球の様子や氷の大地へ決死の遠征に向かう主人公達など、多くの設定や展開がまんま同じ作りになっているのだ。最近の便乗映画は日本の配給会社がパッケージデザインや邦題に凝っているだけで、本作のように内容までそっくりな作品というのはあまり見掛けなくなっていた。それだけに本作を観た時、私は妙に懐かしい気分になったものだ。
さて話は変わるが、本作の元ネタである「デイ・アフター・トゥモロー」の見所は、予算を惜しげもなく使うことによって描かれた市街地の破壊シーンである。雹と竜巻と津波の高度なCG技術による波状攻撃は、パニック映画が好きな人間ならば少なからず狂喜乱舞したことだろう。ところが一方の本作はと言うと、破壊シーンが予算の都合で縮小…どころの騒ぎではない。なんと災害シーンそのものが排除され、災害の様子は全て音声ニュースのみで説明されていくのである。低予算で災害の様子を描けない時に使用するこの手法は「エンド・オブ・ザ・ワールド」などの作品にも実際に使われているが、破壊シーンが最大の見せ場である「デイ・アフター・トゥモロー」を曲がりなりにも真似た本作がこれを使っていいはずがない。果たして「デイ・アフター・トゥモロー」から災害シーンを取ったら何が残る? ベタな感動要素と突っ込み所満載の展開しか残らないではないか。つまり本作は、その二つだけで作られた映画なのである。
「48時間以内に人工衛星を止めないと、政府の建物が破壊されて大勢の人が犠牲になる」という設定なのにも関わらず、48時間も経たないうちに次々と照準を変えて電磁波を放つ人工衛星。あっと言う間に吹雪の中の行軍が終わり、後半は銃撃戦で時間を伸ばすという、低予算もここに極まれりと言わざるを得ない展開。そしていつも美味しいところを持って行く犬…など、本作はまるで「デイ・アフター・トゥモロー」の残骸を見せられたような気分にさせてくれる作品であった。

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