地獄甲子園 「評価 C」
豪速球で親を殺したので野球を捨てていた野球十兵衛が、反則プレイ上等の外道高校野球部と戦うために立ち上がる…。
漫$画太郎。読者を舐めているとしか思えないような理不尽さと、爽快と言うほか無い適当さを兼ね揃えた作風で逆に人気を博し、今では何を描いても許される数少ない漫画家の一人である。そして本作はそんな画太郎の代表作の一つを実写映画化したものなんだが、彼の作風を知らずに予告編から「少林サッカー」みたいな作品を期待して観に行った人はあまりにもお寒い演出や臭い演技、そして観る者の期待を悪い方向で裏切りつづける話に憤慨し、絶対に最低の評価を下すことだろう。そもそもこの映画が目指しているのは画太郎世界の三次元による再現であり、決して超人野球映画ではないのだ(あのような誤解を招く予告編にしてしまったのが問題なのだが)。
そんな点で考えるとこの映画は、敢えて万人向けであるのを捨て、画太郎特有の適当な展開をちゃんと継承した内容に仕上げているので、この潔さに関しては十分評価できる。
しかしだからと言って、この映画が面白いかどうかは別の話だ。確かに本作は好き勝手にやることで、ある意味「宇宙の戦士」以上に実現不可能と言われていた画太郎世界の実写化を果たした。だがこの映画は画太郎作品なだけでなく、「地獄甲子園」なのである。本作は映画としての体面上、ブッた切りな終わり方をした原作に続きの話をつけて、ちゃんと戦いの結末までを描いている。しかし原作のあまりにも衝撃的なラストに只ならぬ興奮を覚えた身としては、それが完全な蛇足に感じられてしまうのである。おまけに原作部分が手早く終わってしまうので、泰造とパンチも合体しなければ、教頭も下痢まみれになって力尽きたりはしない(特に泰造パンチは実写で観たかった…)。同時上映のラーメン馬鹿一代が原作に忠実に作られていて非常に面白かっただけに、この観客のニーズに応えたとは言い難いアレンジには個人的に不満が残る(尤も、この映画に何を求めていたのかは人それぞれだろうが)。そんなわけで本作は製作者の意味込みこそ良かったのだが、その力が変な方向に行ってしまい、結果として「地獄甲子園」とは別物になったのが惜しまれる映画だった。
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