ザ・ネスト 「評価 B」
外の世界とは完全に隔絶した孤島。そこにはかつてゴキブリの駆除薬などを開発していた研究所があったのだが、今は閉鎖され、町外れに寂しく佇んでいるだけだった。しかし実験に使われていたゴキブリ達は未だ生き残っており、実験の影響で進化した彼らは島の住民達に襲いかかる!
実物系。それは俳優のガッツ無しには成立し得ないジャンルである。「人蛇大戦 蛇」では本物の蛇が敷き詰められた床の上を転げまわり、「ラッツ(2004年にリリースされた方ではない)」では本物のドブネズミによるシャワーを頭から被る。CGでは無い本物を相手にした彼らの演技(そもそも、これは演技と言えるのか?)は、今も我々の目に強烈な印象を残している。仕事のためとは言え、スタント無しでこんな無謀なアクションに挑んだ彼らには畏敬の念を抱かずにはいられないだろう。
さて、本作でもそんな実物を使った撮影が行われている。しかも使用しているのが、身近にいる嫌な物の代名詞とも言うべきゴキブリ。本作の俳優達は全身にゴキブリを纏うのは勿論のこと、あまつさえ生きたゴキブリを口に入れてさえいる。ゴキブリを食べる文化圏に属していない国の映画なので、「俺達、なんでこんな事やってるんだろうな…」と心底嫌そうな顔をしている俳優達が、本作では拝めるのである。その他にもゴキブリがワイパーで潰されたりミキサーにかけられたり、電子レンジで破裂させられたりと、本物ならではの嫌〜なシーンがてんこもり。所詮虫だからネズミや蛇と比べると幾分か嫌悪感は薄れる感じだが、それでも嫌な気分になるには十分な出来映えである。
また本作では、本物のゴキブリの他にも立派なクリーチャーまで拝めたりする。映画の後半、ゴキブリに殺された猫や人間が半ゴキブリ化したゾンビとなり、主人公達に襲いかかるのだ(原理はよく分からん)。その上、ゴキブリ達に指令を出している女王ゴキブリも上半身に幾つもの頭蓋骨を埋めこんだような禍禍しい姿をしている。(なんでこんな格好なのかは不明)このクリーチャー達はなかなかグロテスクな良いデザインをしており、全員揃って呆気なく倒されたのに目を瞑れば、怪物好きも満足できる作品となっているのだ。
しかし本作、人物の描写に関してはとことん駄目である。ゴキブリと戦っている最中だというのに娘を放っておいて真っ先に自殺する父親やら、場面ごとに行動原理が変化するマッドサイエンティストなど、とにかく理解に苦しむような人物が多すぎる。突き抜けた嫌な描写や怪物のデザインのおかげで評価はBだが、映画をドラマ重視で観る人には決して薦められない映画である。
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