ジュラシック・シティ              「評価 C」
湾岸戦争当時、アメリカは極秘に遺伝子操作によって知能を高めたクローン恐竜を用いて戦局を有利にしようとする「ジュラシック計画」を進めていた。ところが終戦と同時に計画は中止。計画の内容は完全に闇に葬られた。
しかしそれから数年後、荒野をドライブしていた三人の若者が謎の生物に殺されるという奇妙な事件が発生した。そこで保安官と動物学者は事件の調査に乗り出したのだが、その時保安官の娘が謎の生物に襲われてショック状態に陥ってしまう。保安官達は娘の心配をしながら捜査に励んだのだが、調査を続けるうちに事件現場近くの卵工場が怪しいことが発覚した。そう、実は工場のトップである男はかつてジュラシック計画に取り組んでいた科学者であり、知能を高めた恐竜を中東に売って金儲けをしようと企んでいたのだ。だがそんな時に恐竜の一匹が工場を逃げ出し、町を荒らし回っていたのである。そうとは知らずに保安官と動物学者は証拠集めに奔走するが、こうしているうちにも次々と恐竜の餌食となる人間が続出していく…。
どんなに低予算といったって、それなりに金がかかるのが映画というものである。役者のギャラやスタッフの人件費などの基本的な物に加えて、作るのが怪獣映画だったりすると、模型代か着ぐるみ代かCGスタッフの人件費のどれかがどうしてもかかってしまう。だが映画界には、そういった金を一切使わないで映画を作ってしまおうと考えた人間がいた。昔のニュース映像や他の映画の特撮カットなどを拝借して自分の映画の中に繋ぎこむという、実にやる気を疑う巧妙な手段だ。そして本作も、そういった有り物のフィルムを繋げ合わせて作られた怪獣映画である。なんと驚くべきことに、特撮カットの90%近くがロジャー・コーマンの「恐竜カルノザウルス」から頂いており、カルノザウルスと併せて観ると非常に混乱する事請け合いの作品なのだ(同じようにカルノザウルスの着ぐるみや特撮カットを使い回した映画は、「恐竜カルノザウルス2」や「ジュラシック・アマゾネス」などたくさんある)。しかしカルノザウルスのクライマックスの戦いである「恐竜とショベルカーとの格闘シーン」まで無理矢理話に繋ぎこんでいるから、主人公が操縦しているのがいつの間にかショベルカーからフォークリフトに変わっていたりしても誰も突っ込まない。更に無駄に長いエロシーン(たかが1シーンに5分もの時間を割いている)やほとんど殺されるためだけに出てきたような軍隊まで、劇中の至る所にロジャー・コーマン映画の定番とも言える要素がてんこ盛り。実に潔いといえば潔い映画なのだが、当然の事ながら映画としての出来は最悪に近い。だがこの手の映画の永遠の定番である「全滅したかに見えた生き物が無傷でいきているラストカット」が本作では意表を付いた形になっており、拝借満載の映画の中にかいま見たオリジナリティが非常に印象に残ったので結果としてこのような評価となったが、この映画には製作者の労力の跡なんて微塵と見られないと繰り返しておこう。

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