少林サッカー            「評価 S」
何はともあれ、ここ数年の香港映画の発展には目覚しいものがある。かつてブルース・リーを筆頭としたカンフー・スターで大いに盛り上った香港映画界は、その人気に便乗して非常に多くのカンフー・スターを見つけ、世に輩出した。そんな人間達の中にジャッキー・チェンやジェット・リーがいたわけだが、彼ら二人のように本当の売れっ子になったのはごく少数。カンフー・スターと持て囃されていたほとんどの人間は、ブームの低迷と共に続々と姿を消して行ったのである。そしてその後10年近くもの間、香港映画界は暗黒期と呼べる時代に突入する。出来た映画はそのほとんどが過去の二番煎じ三番煎じ、ジャッキー・チェンやジェット・リーはアメリカに活躍の場を移してしまうし、もはや香港映画界は細々とカンフー映画を撮りつづけるしかないのだと思われていた。ところがそんな時、香港映画界に転機が訪れる。「風雲 ストームライダーズ」のようなCGやワイヤー・アクションをバンバン使って漫画的誇張表現をまんま実写化したような映画が作られ、世にウケたのである。それがどれほどウケたかというのは、「グリーン・デスティニー」の特殊効果が大きな評判を得たことでお分かりだろう。
そして本作は、梶原一騎の野球漫画の影響ですっかり必殺シュートのオンパレードになってしまった日本のサッカー漫画をまんま実写化したような、実に見事なサッカー映画である。本作はコメディだからといって、いかにも「これはパロディです」なんていう雰囲気は一切無し。あくまで誇張部分は大マジメであり、なおかつ笑わせるところはしっかり笑わせてくれるという、パロディの理想型とも言える内容になっているのだ。話の内容も、いきなり圧倒的強さを見せる主人公から反則ばかり使うチームとの練習試合、そして金にモノを言わせて薬で強化したチームとの戦いなど、非常にやり過ぎな印象はあるのだが、むしろそのやり過ぎ感が「サッカー漫画版アストロ球団」を思わせて楽しい。本作は日本のスポ魂漫画に熱中した人間なら誰でも楽しめる映画である。

それにしても、「少林寺で修行しても現代の世の中では全く役に立たない」という前半部分のテーマとも言うべきところが、どうも落ちぶれて行ったカンフー・スター達のことを想起させてならない・・・。

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