世界大戦争 「評価 A」
1961年、世界は同盟国と連合国が互いに陣営を競い合っていた。どちらの国も陣営下にある全ての国に軍備基地を設置し、両者が睨み合う緊張状態はいつまでも続いていたのだ。
だが両者は睨み合いを続けていながらも、心の底では平和を願っていた。平和で安全な世界を作るには全ての国が武力を捨てるしかない。それは分かっていたのだ。だが相手の陣営がいつ攻めてくるか分からない。その不安に駆られた両者は攻めてこられたときに備え、各々に武力を増強していったのである。
そんな中、連合国と同盟国、双方で核弾頭が誤発射されかけるというアクシデントが発生したり、朝鮮38度線に於いて核弾頭が使用されたりと、互いの緊張状態はとうとう爆発寸前にまで追い込まれていった。
その後、両者の働きによって朝鮮の戦いによる緊張状態は一旦静まりかけたものの、それから数日後、いよいよ両者は緊張を爆発させることとなった。ベーリング海の戦いを始めとして、中東、アフリカなどを舞台に両者は武力で正面から衝突したのである。それらの戦いの煽りをうけ、いよいよ連合国は核弾頭を東京へと発射した。まさに今、全人類の歴史は幕を閉じようとしているのだ…。
当時の冷戦下における緊張状態をうまく描写し、世界が迎える最悪の結末を描いたのが本作。こんな内容の映画、自分の陣営が勝つことを信じていたアメリカやソ連ではまず作れないので、まさに日本独特のものと言えよう。この映画についてはよくウエハースを用いた爆発シーンや溶岩の中に議事堂の屋根が浮かぶシーンが言及されているが、それ以上に本作で巧みに作られているのは滅亡へと歩み出す各々の人間描写であろう。核の使用を禁止する声明を出しながらも、力及ばず核弾頭の発射を阻止することが出来なかった内閣はもちろんのこと、他にも連合国の司令や同盟国の観測員、日本の一般家庭など、様々な国の様々な階級の人間からの視点で核戦争までの経過が描かれており、彼らの織りなす細かいドラマが本作の最後にテロップとして出るテーマを大きな感動へと導いているのだ。ミサイルから爆弾を取り外すシーンが見せ方の悪さ故に緊張感に欠けたものになっていたり、ニューヨーク爆発のシーンで自由の女神の吹っ飛び方が明らかに不自然だったりするのだが、それでも日本映画史に残る傑作と呼べる映画だった。
GO TO TOP!!