ザ・チャイルド 「評価 A」
べナビスという街に観光に来ていた夫婦がいた。その夫婦はのんびりリゾートを楽しもうとしていたのだが、事もあろうに街はお祭りの真っ最中。街では一日中爆竹の音が鳴り響き、とてもリゾートどころではなかったのだ。そこで夫婦は街から船を借りて、すぐ近くの「アルマンゾーラ島」に行ってバカンスをすることにした。だが不思議な事に、アルマンゾーラ島に大人の姿は無く、島にいるのは無口な子供達だけであった。その事を不審に思いつつも、とりあえず二人は島のホテルへと向かった。ところが、そこで二人が見たものは老人を杖で撲殺している子供の姿だった! そう、この島の大人達は全員ここの子供達によって殺されてしまっていたのだ! それを知った二人は、慌てて島を脱出しようとしたのだが…。
スティーブン・キング原作の映画に本作と同名のがあるが、上の文を読んでもわかるように本作は全くの別物である。なんと事もあろうにこの映画は、子供達が大人を次々と殺していくというショッキングな内容のカルト映画なのだ。だが、カルト映画とはいえ本作は侮れない。本編中に多少、他のホラー映画と似通っている部分が見られるのだが、その代わりに見ているほうが思わず怖くなるような秀逸なスリル描写や、とても115分映画とは思えないようなテンポの良さが非常に評価でき、本作は普通のホラー映画として見てもなかなかの出来具合なのである。
しかし、さすがの私も本作のテーマには馴染めなかった。一応この映画では「いつも歴史の犠牲になるのは子供たちだ。」というメッセージを掲げており、映画の冒頭では7分もの時間を「歴史の犠牲になった子供達」の紹介に費やしているのだ(しかも作り方が「世界残酷物語」っぽい)。でも、だからといって本作に出てくる殺人チャイルド軍団は、別に自分達を虐げてきた大人に反撃するつもりで殺しているわけでもなく、ただの愉快なゲームとして殺しているだけである。これではテーマの意味が全く無い(と言っても、恐らくは子供達が大人を殺す為の理由付けをしたかっただけなんだろうが)。
ガキが群がって大人を殺すので、全体的な不快感はかなり高いんだが、先ほども述べたように本作は映画としての出来がなかなかだ。いかなる事にも平静を保っていられる自信がある人は、ぜひどうぞ。
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