シャフト                    「評価 A」
本作は黒人映画「黒いジャガー」のリメイクである。しかしリメイクと言えど「黒いジャガー」に比べると劇中に登場する白人の数が非常に増えており、黒人映画というジャンルが最近消えつつあるという事が観てとれ、少し寂しい気がしてしまう。だがそれでも劇中に流れる音楽はバリバリに格好いいし、作品の奥底のテーマである「正義」はしっかりと残っているし、相変わらず痛快アクション映画として観客を楽しませてくれるのだ。
ある街で、一人の黒人青年が人種差別者のウォルターによってポールで殴られて殺された。そこでシャフト刑事はウォルターを逮捕したのだが、無能な裁判官のせいで彼は保釈金を払うのみで釈放された上、そのまま海外へと逃亡してしまったのであった。それから数年後、どういうわけかウォルターは再びアメリカに帰ってきた。シャフト刑事は再び彼を逮捕しようとしたのだが、そんな中貧民街のボスであるピープルスと対立してしまい、シャフト刑事は麻薬を扱う彼ら一味とも戦う羽目に陥ってしまう。果たしてシャフトは、ウォルターとピープルスの2人に制裁を与えることができるのであろうか…
この作品にはCGもなければド派手な爆発シーンも無い。ただあるのは、カーチェイスと銃撃戦のシーンぐらいのものである。だが、この程度のアクションシーンでも大迫力に見せてしまうのは、ただただ演出家の力量と言う他無い。単純なシーンほど、格好良く見せるには力量を要するものなのだ。そして、そういったシーンの中で繰り広げられるシャフトと人種差別者ウォルターとの戦いも、ピープルス率いる麻薬組織や殺された黒人の母親が話に介入していることで一段とスリリングになっているのが面白い。
それと、本作で大いに評価できる点はもう一つある。それは、登場人物の性格づけだ。本作の主人公であるシャフト刑事が、「自分が悪と思った奴は即ブン殴る」という、いかにも黒人映画の主人公という性格づけをされている上、相棒は相棒で、「迷惑だけど困ったシャフトを助けずにはいられない」という相棒キャラの王道をいく性格になっている。もちろん敵側も、いかにも悪といった性格の奴が多く、それが痛快アクションという性質を形成している点も見逃せない。
本作は、基本的に白人の人種差別との戦いを描いた内容でありながらも、ピープルスがアラブ系のドミニカ人だったり、話の中でシャフトが命を狙われている白人を助けたり、子供を放ったらかしにしている黒人に鉄拳の制裁を与えたりと、悪の根源を白人だけにしておかないところが良い。正義とは人種に関係なく存在するもの。本作は、そんな事を考えさてくれる映画であった。

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