ドッグ 「評価 C」
蟻がそうであるように、群れをなした動物は何らかの理由によってそれ自体が個体と別の知能を持つらしい。そんなわけでこの映画では、本来人間に忠実だったはずの飼い犬が群れを作ったことにより凶暴化、人々を襲い始める様子が描かれている。カリフォルニアの農場で、牛が殺されるという事件が発生した。続いてバイクに乗っていた学生が人間以外の何者かに襲われ、警察は原因究明を急いでいた。動物の行動を研究していた大学教授らは、事件の犯人を集団化した飼い犬ではないかと考え、用心のために犬の放し飼いをやめるようにとの通達を出して欲しいと町の上層部に懇願した。ところが当然のことながら、普段おとなしい飼い犬が人を襲うなんて信じてくれるはずも無く、要求はあっさりと退けられてしまった。一方その頃、町の広場で行われていたドッグショーの最中、出場していた犬達が突如として人間を襲い始めた。しかもそれを起点として町中の犬達が暴れだし、瞬く間に町はパニックに陥る…。
まさしくタイトルが全てを物語っている、犬を主役に据えたモンスターパニック映画である。犬達が暴れる原因は作中で断定されず、一応町の施設で謎の実験が行われていることが仄めかされたりするるものの、深くは追求しないで人間と犬の追いかけっこを描くことに力を入れていた。だが単体の犬が人を襲う「未確認生命体MAX」や「アトミック・ドッグ」と違い、本作は飼い犬として人気のある犬が総動員されているので、明らかに人間を襲えないような子犬までもが大型犬らと一緒になって人間を追いかけているのが何だかなあという気分にさせてくれる。「犬が野生化したらこんなに恐ろしい」という主題なのにも関わらず、可愛らしい子犬のおかげですっかりその恐怖感が薄らいでいたのだ。
しかしこの映画、ラストがナイスである。車に乗り、犬の襲撃から逃げ延びた主人公達。カーラジオからは同じような事件が全米中で起こっていることが報じられており、「今のところ、異常になっているのは犬だけのようです」とキャスターが言っていた。ところが車が通り過ぎた後、道端にいた猫がクローズアップされ、ニャーという鳴き声と共にエンドクレジットが出るのだ。「事件は犬だけでは終わらない」ということなんだろうが、これが鳴き声の間抜け具合も相俟って絶妙な味を醸し出していた。
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