ドイツチェーンソー大量虐殺 「評価 C」
1989年11月9日。東西ドイツを隔てていたベルリンの壁が壊され、互いの国を行き来するのも自由になった。だがそれにより自由の国に憧れを抱いていた東ドイツ人達が一斉に西ドイツへなだれ込み、夥しい規模の人口流出が起こったらしい。これはその時の混乱の様子を、血と狂気に溢れた映像で表現したカルトホラー映画である。
東ドイツのライプチヒで暮らしていた女性、クララ。同じ東ドイツ人の夫と暮らしている彼女だが、実は西ドイツには共に愛し合った男アーサーがいたのだ。そこでベルリンの壁が崩壊したとの報せを受けるや否や、クララは家族を手早く殺害して西ドイツへと脱出した。その後アーサーと連絡を取り、無事再会を果たすことができたクララ。ところがアーサーは出会い頭に彼女に性交を強要し、道端に敷いていたシーツへと彼女を引きずり込んだのである。突然のことにクララは混乱し、ただ叫ぶばかりだった。するとそこへ奇妙な帽子を被った男クルトが現れ、持っていた石でアーサーをボコボコに殴り付けた。何度も殴られ、アーサーの顔が歪んでいく。慌てたクララは助けを求めようと、近くの家に駆け込んだ。しかしそこに住む家族は、東ドイツからやってくる人間を片っ端から撲殺してはその肉でソーセージを作っているという狂人の集まりだった。クララはやがて彼らによって監禁され、家から逃げることもできなくなってしまった。そう、「自由の国」西ドイツは人口流入の混乱により無法地帯と化していたのだ…。
「何でも可能なときに良いも悪いもあるか」という台詞が象徴するように、本作は自由の国(且つ無法地帯)において、好き勝手に暴れ回る者達の描写に腐心している。恋人との再会を果たしたいクララや、彼女に襲いかかるアーサー、そして金儲けのために人肉ソーセージを作り続ける一家など、ストレートに欲求を満たそうとする人物が次々と登場し、互いの欲望が対立することによって話の筋が目まぐるしく変わっていく。またそれに人肉ミンチの製造過程や車で轢かれた女性が真っ二つになる場面など、目を覆わんばかりの血みどろな部分が加わり、本作では実に不気味な映像世界が繰り広げられるのだ。進行に併せて話が理解できない方向へ逸れていくものの、恐ろしい世界の描写については観るところのある映画だった。
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