チュパカブラ 「評価 D」
チュパカブラ。本作以前でこの怪物を題材にした映画となると、「チュパカブラ・プロジェクト」が思い出される。「ブレアウィッチ」のような似非ドキュメンタリー形式をとっておきながら俳優達の大根演技のおかげで台無しになっていた上、ラストではチュパカブラの解剖フィルムまで用意されていた、何とも評価しがたい映画だった。しかしあの映画は製作者達の凡才が故の駄作であり、中米版吸血鬼とも言うべきチュパカブラの題材自体は悪くない。ちゃんと作りさえすれば、少なくとも普通のモンスターパニックになるはずである。幾らなんでも「チュパカブラ・プロジェクト」ほど酷い出来にはならないだろう…と思いつつ私は本作観た。ところが困ったことに、これが「チュパカブラ・プロジェクト」に匹敵するレベルの悲惨な作品だったのである。
とある街で、何者かによってペットが殺されるという凄惨な事件が続発していた。ペットは皆刃物のような物で体を裂かれていたものの、不自然なまでに流血の量は少なかったという。未確認生物を追っていた女性はその話を聞きつけると、これを吸血怪物「チュパカブラ」の仕業と考え、早速調査のために街を訪れた。そして彼女はペットの死骸の回収を行っていた保健所の青年を見つけると、彼に協力を仰ぐ。青年はチュパカブラの事などまるで信じてはくれなかったが、彼自身事件を不審に感じていたらしく、共に真相を追求することを承諾してくれた。だが事件を追う二人に、様々な障害が立ちはだかる。「素人は首を突っ込むな」と二人を排除しにかかる警官コンビ。真相を知っているらしい謎の男。そしてペットはおろか、街の住民にまで危害を加え始めたチュパカブラ。彼らの度重なる妨害にも負けず、二人は捜査を続ける。やがて二人は事件の発端となったらしい研究所を見つけるのだが…。
こんな風に、基本的な筋はオーソドックスなものである。しかし本作はこれに、未確認生物モノの定番である「チュパカブラを捕らえたら懸賞金が入る」なんて要素を入れたおかげでどんどん話が迷走していくのだ。そもそも懸賞金が出されたという話自体台詞でしか説明されておらず、いかにも取って付けたという印象がする。なのにそれ以降、本筋のはずの謎解きが度々中断されて、街の男達がチュパカブラ捕獲を試みて失敗する場面が挿入されるのである。これは話のテンポを崩す以外の何にもなっておらず、結局それまで一応手順を積んで行われていた謎解きが、映画の終わり近くになって何の前触れも無しに佳境に突入してしまう。余計な要素を入れたことで本筋が疎かになってしまった最もたる例と言えよう。
チュパカブラの着ぐるみはそこそこ良い出来なのに、話がこれでは楽しむことも出来ない。また「チュパカブラ・プロジェクト」の解剖シーンのような噴飯物の場面も存在しないので最低映画としても楽しめず、あんまりな内容の映画だった。
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