直撃! 地獄拳             「評価 B」
滋賀の山奥、甲賀忍者の末裔として幼い頃から修行を受けていた、一人の男がいた。その名を甲賀竜一。空手の技も習得した彼はやがて独立し、何処かの街で探偵業を営んでいた。そんなある日のこと、彼に依頼が舞い込んだ。元刑事の殺し屋、合気道の達人である死刑囚の二人と協力し、麻薬を密輸する国際マフィアを壊滅させてほしいというものだった。仕事内容はともかくとして、多額の報酬金が出るらしいので喜んで引き受けた竜一。だが用心深いマフィアは仕事を確実に行うために、名のある用心棒を世界中から集めていた…。
石井輝男。「ねじ式」「地獄(1999)」「盲獣VS一寸法師」と今となってはカルトから戻ってこれない感のある監督が、初めて本格アクションに挑戦したのがこの映画だ。しかも主演はかのサニー千葉! 彼の実力については東映の「殺人拳」シリーズで既に遺憾なく発揮されていたものの、これが石井輝男監督の独特すぎる演出と出会うとなると話は別である。
一度格闘シーンに突入するとさあ大変、過剰描写の嵐が吹き荒れる! 飛び出す眼球! 抜き取られる肋骨! 噛み千切られる耳! 敵に捕らえられたら容赦の無い袋叩き! これら壮絶な場面の数々はグロテスクを通り越して最早ギャグの域に達しており、監督自身の意向はどうだったかは別として、コメディ調の本作への強烈なスパイスとして効果的に作用しているのだ。
また本作、マフィアに雇われた用心棒の顔ぶれが非常に濃い。シシリアンレスリングの猛者である安岡力也(あくまで劇中の設定です)、「閃光ブレイザーパンチ」の西城正三(元世界チャンピオン)といった大物から、ガンダーラ拳法の使い手やら全アラブ空手王やら、凄いんだか凄くないんだか分からないような肩書きをもった格闘家まで大挙出演! そんな連中に対し、サニー千葉扮する空手家兼忍者兼探偵の男(何とも贅沢な設定だ)を始めとする三人が、助っ人の倉田保昭(代表作:帰ってきたドラゴン)を交えて敢然と立ち向かう!
劇中で織り込まれるギャグが滑っているとか、三人のチームワークがバラバラで途中から収拾がつかない状態になっているとか、作品自体については色々不満はあるものの、彼らの熱闘によってそれらは全て帳消しにできる。数あるアクション映画の中でも、とりわけ娯楽色の強い作品だ。

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