テンペスト 旋風の破壊神             「評価 D」
地球に急接近した巨大隕石。幸いにも擦れ擦れのところで衝突は免れたが、その影響で大西洋上に前代未聞の巨大ハリケーンが出現した。その大きさは北米大陸を覆い隠してしまう程であり、もし直撃したらアメリカが受ける被害は計り知れないものになるだろう。そこで米軍は考えた挙句、4年前に存在が抹消された気象を操る兵器を用いてハリケーンを消滅させる計画を打ちたてた。早速集められる当時の技術者やパイロット達。4年前の失敗が蟠りとなっていた彼らは、初めこそプロジェクトに乗り気ではなかったものの、次第にかつての自分を取り戻し、ハリケーンに立ち向かう決心をする…。
本作は世界の危機を救うヒーローを描いた映画なのだが、多くの要因が足を引っ張ってしまい、結局何をやりたかったのかが分からないような出来になっていた。
まず第一に、本作にはハリケーンによる具体的な破壊描写よりも、ハリケーンと人間達の戦いに時間が割かれている。それ自体は構わないんだが、破壊描写が無いために観ていて全く危機感が沸いてこないのである。幾ら劇中の台詞やデータでハリケーンの凄さを煽っても、実際に被害に遭った民家とかがハリケーンが去るまで少しも画面に登場しないようでは(しかも最後に映された建物は少しも壊れておらず、ただ物が辺りに散らばっているだけ)、その凄さは観ている者に伝わってこない。せめて民家の破壊シーンの一つでも挿入されていれば解決するような不満なだけに、これはより大きなマイナス要素となっているのだ。
また、途中で割り込まれる軍の機密漏洩に関する話も、密告者の意図が全く掴めない上に最後まで本筋に絡んでこないので、単なる話のテンポを崩す時間繋ぎとしか感じられない。
将軍と主人公達との掛け合いやSF的な兵器など、見所はたくさんあるのに、それらの良い点を気の利いていない演出と脚本が無残にも吹き飛ばしてしまった。その残骸とも言うべき本作は、やはり評価しがたい映画であった。

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