電柱小僧の冒険           「評価 A」
塚本晋也監督。「鉄男」シリーズを始め、数多くのシュールかつ幻想的な「芸術的作品」を世に送り出している人である。そして本作も、そんな監督が世に送り出した映画の一本であり、やはり当然のごとくシュールな作品であった。
ある平和な町に、背中に電柱が生えている奇妙な少年「電柱小僧」が暮らしていた。彼はある日、自らの手で作り出したタイムマシンによって25年後の世界へと飛んでいってしまう。だが未来は、半分機械と化した吸血鬼軍団「闇の新選組」の開発したアダムジュニアという爆弾によって、昼空が黒雲に覆われた暗黒の世界となっていたのである。吸血鬼は自分達の住み良い世界を作るために、太陽光を遮る黒雲を作り出したのだ。それを知った電柱小僧は、街で出会った「先生」と共に太陽を取り戻すため吸血鬼と戦う決意をする。だがその頃、吸血鬼は世界中を黒雲で覆う最終兵器「イヴ」の開発にかかっていて…。
「電柱小僧」の存在だけでも異彩を放っている本作だが、それ以上に独特すぎる世界観がこの映画の中では溢れかえっている。後の「鉄男」のように、ストップモーションの連続で動き回る機械と、メカ吸血鬼が移動時に乗っている怪しい乗り物。メカ吸血鬼達が住んでいるのが一般的な平屋というミスマッチ感。一瞬音質が悪いのかと思い違いをしてしまう程の凄まじい音楽。完璧なまでに脱力感に満ちた「イヴ」のデザイン。そして、25年後の未来のくせに一瞬だけ映る「土井たか子」の選挙ポスター(おい!)。これらの全てが常識を逸脱しており、映画という世界の底知れなさを我々に思い知らせてくれるのである。
ほとんど自主映画のため役者の演技に多少不満はあるが、その分「鉄男」シリーズより話の展開が分かりやすく、初心者にも取っ付きやすい映画だ。

GO TO TOP!!