キングスパイダー          「評価 B」
ロスアンゼルスの研究施設。ここでは、兵器として開発された殺人蜘蛛が密閉容器によって保管されていた。ところが見回りをしていた者のミスによって、その容器は破壊されてしまう。解放された蜘蛛達は瞬く間に数を増やし、施設の人間に襲いかかった。二時間後、連絡を聞きつけた軍の連中が到着したものの、既に施設は壊滅していた上、蜘蛛達は合体して一匹の巨大蜘蛛「キングスパイダー」に変身したのである! 戦車や戦闘機を動員して立ち向かう軍隊だが、キングスパイダーは攻撃を巧みに躱しながらハリウッドを蹂躙する! もう誰も奴を止めることはできないのか!?
しかもその頃、遠く離れた場所にあるライブスタジオでも同じように、従業員が殺人蜘蛛に襲われていた。なんと軍の手違いによって蜘蛛を入れた容器がここにも運び込まれており、それが従業員のミスによって開けられていたのだ。こうして殺人蜘蛛による災害は、二箇所で同時発生してしまったのである…。
蜘蛛だ蜘蛛だ、ああ蜘蛛だ。通常サイズや掌サイズ、はたまた全長数十メートルのキングスパイダーが登場したかと思えば、クライマックスには人間が変身した蜘蛛男まで出てくるという、ありとあらゆる蜘蛛映画の要素を刃の欠けたミキサーにぶち込んだかのような恐ろしい作品の登場だ!
何と言ってもこの映画、出演する蜘蛛さん達の凄いこと凄いこと。誰が見たってただのゴキブリにしか見えない通常サイズの蜘蛛! 何故か足が六本しかない掌サイズの蜘蛛! 「スパイダーズ2」も真っ青なショボショボのCGで描かれるキングスパイダー! 全身血みどろで、何が何やら全く分からない造形の醜悪怪人蜘蛛男! そして掌サイズの蜘蛛の中に時たま混じっている、スタッフが生後6ヶ月の息子の部屋から持ってきたかのような可愛い蜘蛛のぬいぐるみ! どれをとっても爆笑必至の出来映えだ! しかもこの蜘蛛の壮絶さと同様に、ストーリーの方もやる気の「や」の字も感じさせてくれないから驚いた。15分経っても一向に進展を見せない、軍とキングスパイダーとの戦い。実験のために蜘蛛を暴れさせていた奴を英雄扱いする、モラルの欠片もない登場人物達。脚本家の思いつきでコロコロ変わっていく、殺人蜘蛛の産卵方法。観客を完全に舐めきっている、あまりにもあんまりなラストシーン。そしてここまで酷い内容なのにも関わらず、キングスパイダーは「ハリウッドなんて目じゃないぜ!」と言わんばかりに軍隊と一緒になってハリウッドの各名所を破壊していくのである! もうここまでされると私としては感動するしかなくなり、例え映画が「深海からの物体X」並に平坦で退屈すぎる内容だったとしても誉めずにはいられない。他人には絶対にお奨めできないが、とにかく凄い映画であった。

GO TO TOP!!