ケイブ・イン 「評価 B」
炭鉱の街グランプトン。ここでは殆どの男が鉱山で働いており、青年ラビットも高校を中退して鉱夫の仕事に就いていた。ところが同じ炭鉱で働く父親のチーフは炭鉱の危険をよく知っていたため、息子には大学に進んで別の道を進んでもらいたいと思っていたのである。そしてある日、遂にチーフが恐れていた事が起こった。採掘を急いだ現場担当者の判断ミスにより、削岩機が地下水の溜まっていた部分に穴を開けてしまったのである。たちまち坑道には大量の水が流れ込み、採掘現場はパニックに陥った。急いで逃げる鉱夫達だったが、唯一の脱出口であるエレベーターも暫くすると水に漬かり、ラビットやチーフ達4人は地底深くに閉じ込められてしまった。水面が上がってくる中、坑道の高い場所へと移動していくラビット達。一方地上では、彼の母であり炭鉱の監督官をしているパットが同僚らと共に、4人を救出するべく動き出していた。GPSシステムで4人の位置を特定した彼女らは、地下へ酸素を送る通風孔を掘った後、巨大なドリルで脱出口を掘り始める。だが慌てた彼女の父、キャピーがもっと速く掘るように指示を出したおかげでドリルが折れ、掘り進めることもできなくなってしまった。こうなっては改めて一から掘り直すしかない。しかし地底では既に酸素が無くなりかけており、4人は一刻も早く助けなければ命が危ないという状態だった。この絶望的な状況に、パットやキャピー達は茫然となるより他なかった…。
災害のシチュエーションがさり気なく斬新な本作だが、それよりも圧巻なのは各々の人物描写である。坑道内での僅かな場面で後に活躍する鉱夫を全て登場させ、しかもその間に彼らの説明もしっかり行っているので、災害発生後に余計な人物説明で話の流れが阻害されるような事態を未然に防いでいる。また閉じ込められるのを4人だけに限定し、地底では脱出の試みよりも彼らの性格を掘り下げることに徹底しているため、観客の感情移入を容易にしているのだ。救出する側の地上と、救出される側の地下を完全に分けたことが功を奏した結果と言えよう。
他にも脱出口を掘る際にちゃんと気圧のことが考えられていたりと、細かな描写にもそつが無いこの映画。「嵐が近寄ってきている」と地上側で散々気を揉ませておきながら、結局嵐は逸れて何の障害にもならなかったのは腰砕けだったが、全体的に無駄なシーンの少ない、密室パニック映画の佳作である。
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