キラーバージン          「評価 D」
街角に聳えるグランドホテル。ある晩ここに、一人の女性が部屋を借りた。自分のことを科学者と称する彼女だが、実はその頭には脳が存在しなかった。以前実験によって奇妙な生物に取り付かれてしまった彼女は、脳を体外に排出されていたのだ。幸い寄生生物にはテレパシー能力があったので、彼女は体外の脳と交信して何とか自我を保っていた。しかしこのままでは、寄生生物に体を支配されたままである。既に寄生生物は何十匹もの怪生物を体外に産み落としており、隣町の住民は怪生物らの手によって死に絶えていた。そこで彼女は脳に電気信号を送り、それをテレパシーで受信することで寄生生物の制御を試みる…。
寄生生物が牙の生えた女性器のような形をしているという理由で、「キラーコンドーム」に対抗してこんな邦題をつけられた本作。パッケージまで馬鹿映画っぽくデザインされているが、内容の方はクローネンバーグの影響が見え隠れする、あっち方面に突っ走った怪作である。
科学者が自分の脳を刺激することによって展開される、現実と夢の狭間を表現した断片的なイメージ映像。噴火する火山。暗闇に笑う男。鍾乳洞と化した部屋。宇宙を漂う不定形物体。それらのイメージは寄生生物の持つテレパシー能力を介して現実世界にも干渉を及ぼし、目玉の付いたジャガイモが登場したり、鉢植えの花が自在に動き回ったりと、科学者の泊まるホテル自体が奇怪な空間に様変わりしていく。本作はその様子を暗く汚い映像で表現しており、まさしく電波としか言いようのない世界が築かれているのだ。
また現実世界が奇怪になっていくに連れて話の方も常人には到底理解できないような方向に逸れていき、観客を突き放した状態で映画は終わってしまう。理解の範疇を越えていたが、観終わった時に不思議な余韻を残した作品だった。

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