巨大怪獣ザルコー           「評価 C」
地球人類は生き残るに足る存在か。全宇宙を統べる銀河連邦はこの問題に対し、あるテストによって答えを導き出すことにした。テストの内容はこうである。まず地球の兵器では太刀打ちできない巨大怪獣ザルコーを送りこみ、平均的な能力を持つ一人の地球人にザルコーの特性を教え込む。その男が機転を利かせてザルコーを倒す手段を見つけられたら人類はテストに合格したことになり、生き延びることを許される。だが逆に、彼が退治手段を見つける前にザルコーに殺された場合、地球は銀河連邦に見捨てられてザルコーに滅ぼされるのだ。そして平凡な郵便局員がテストの対象に選ばれ、ザルコーと戦わされるのだが…。
アメリカが日本の怪獣映画に影響を受けて生み出したこの映画。低予算なので特撮シーンがあまりにも少なく、「おっ、軍隊がナパーム弾を撃ちました! やった、爆発した! 煙でよくは見えませんが、怪獣はどうやら死んだ模様です。……あれっ、まだ何か動いている。あっ、怪獣です! 怪獣がまだ生きています!」こんな風にラジオの音声で状況を説明するという苦肉の策が素晴らしかったりするものの、全般的な見せ場の少なさは怪獣映画として致命的だと言える。
だが本作、その特撮シーンの短さが故に生み出されたと思われる、泥沼化していく主人公の姿が何とも言えず面白いのである。
銀河連邦からの指令を受けた主人公は何をしたらいいのか分からないので、取り敢えずザルコーが暴れている様子を報道していたテレビ局に向かった。そしてスタジオに潜入し、コメンテーターである生物学者に意見を求めようとする主人公。だが「僕が怪獣を倒す人間として選ばれたんだ」という彼の話は当然信じてもらえず、生物学者はヤク中のいかれた男が来たと思って騒ぎ出す。駆けつけてくる警備員。銃を突きつけられた主人公は錯乱状態に陥り、警備員から銃を奪うと生物学者を引き連れ、テレビ局のトイレに立て篭もった。こうなったらもう、誰がどう見てもヤク中の一人騒ぎである。挙句に警察隊まで来て、最早怪獣退治どころでは無くなる主人公…。
この何もかも悪い方向に転がっていく場面は特撮シーンの少なさを埋めるために作られたものなんだろうが、これが実に笑えてしょうがない。まさに低予算が生み出した名場面なのである。

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