黒い絨毯 「評価 B」
アマゾンの農園へ、夫を訪ねにきた女性。彼女は結婚しているものの、未だ一度たりとも夫の顔を見たことが無かったのである。だが夫は不器用であるが故の酷い人間嫌いで、結婚も体面上のものに過ぎないと言って妻を追い返そうとする。それでも彼女は半ば意地になって農園に留まり続け、やかで夫も彼女に心を開いていく。だがそんな折、農園に向かってマラブンタの大群が押し寄せてきているという情報が入ってきた。夫婦は農園で働く奴隷らと協力して、マラブンタの進行を食い止めようとするが…。
大量発生型の生物パニック映画としては古典にあたる本作だが、特筆すべきところは、全長30キロにも及ぶ(!?)マラブンタの大行列であろう。何万どころの騒ぎではないマラブンタの大群は動物や木々を悉く食い荒らし、肥沃な南米の森林地帯をぺんぺん草一本生えないような荒涼とした土地に変えてしまう。特にマラブンタが通った後の山々が総じて禿山になっている場面は物凄いインパクトがあり、蟻という微小な生物特有の恐ろしさをまざまざと見せ付けてくれるのだ(「黒い絨毯」はこの様子を如実に表した名タイトルだ)。こんな生物にかかれば、人間など一溜りも無い。あれこれと策を巡らせて経営者夫婦は農園を守ろうとするものの、あまりにも長大な相手に撤退を余儀なくされ、最終的に家で篭城戦をするしかなくなるまで追い詰められるのである。また本作は登場するマラブンタが全て本物なため、蟻にたかられる役者を観ているとこっちまでむず痒くなってくること必至。同じ蟻映画でも、稚拙なCGが失笑ものだった「マラブンタ」より遥かに迫力が感じられる。
とこのように、古典と言えど近年の生物パニック映画と比べても十分に面白い本作だが、映画の前半は経営者夫婦の古典的なラブロマンスに丸ごと費やされており、まるでパニック映画の雰囲気を感じさせてくれない。このラブロマンス自体は夫婦の感情の動きもよく描かれており悪くは無いのだが、いかんせんパニック映画を期待して見る人間には長すぎる前置きにしか思えず、随分と展開の遅い映画と受け取られることだろう。
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