感染             「評価 C」
研究所で働いていた一人の科学者が、致死性のウィルスを持って失踪した。もしウィルスがばら撒かれでもしたら深刻な事態になるのは必至で、科学者の弟は懸命に彼の行方を追った。だが彼の居場所を突き止めていくうちに、ある事実が明らかになっていく。科学者は自分が研究していたウィルスが軍事利用されるのを知り、上層部への反抗のためにウィルスを奪ったということが…。
同名の日本映画が04年に公開されたが、それとは関係無い本作はアルバトロス社が99年にビデオリリースしたウィルス映画である。ウイルス映画と言えど大規模な蔓延が起こって人々がバタバタ倒れて行く展開にはならず、自分を騙していた上司に一矢報いようとする科学者と彼の凶行を止めようとする弟との人間ドラマを中心にした本作。血みどろのビデオパッケージから受ける印象に反して地味な内容だが、冒頭と繋がるラストを含め、なかなか楽しませてくれた。
さて本作、話の中盤で自らウィルスに感染した科学者が偶然にもチアリーダーの少女にウィルスを移してしまう。そこで科学者は少女を助けるため、彼女を監禁してワクチン開発に取り組むようになるのだ。この部分は科学者が正義感を持った人物であることを観客にアピールし、映画に深みを持たせるための重要な要素となっている。
だが元はと言えば彼がウィルスを持ち出しさえしなければチアリーダーの少女は平穏な生活を送れたわけで、はっきり言って彼女としてはいい迷惑である。
なのに劇中では科学者のこの行動が必要以上に美化されており、あまつさえ「彼は(チアリーダーの)命の恩人だ」という台詞まで出てくる始末。
犯罪に走らざるを得なかった科学者の悲哀を描く映画なのだから少しぐらいの美化は許されるが、さすがにここまであからさまだと辟易してしまった。

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