怪獣大決戦ヤンガリー        「評価 A」
とある山地帯で発掘された謎の化石。それは今までのどの恐竜の物とも異なった姿をしており、新発見に違いないと人々は騒いでいた。しかしこの化石、実は遥か昔に宇宙人が地球侵略の尖兵として放った大怪獣ヤンガリーの遺骨だったのだ。再び地球の近くにやってきた宇宙人たちは侵略を再開すべく、念波を送ってヤンガリーを蘇生させた。久々に命を得たヤンガリーは宇宙人に命令され、人類を殲滅するために暴れ出した。
韓国B級映画界。欧米や日本の作品からのパクリ上等、文句さえ言われなければ何を撮っても許されるという無法地帯。こんな業界においてアクションやらコメディやらSFやら多種多様な作品を作りつづけ、遂にアメリカと手を結んで本作のような映画まで撮ってしまった男がいた。男の名はシン・ヒョンレ。あの「アーミクロン」の元ネタ、「パワーキング」を撮った監督である。この映画はそんな彼が製作しただけのことはあり、やはり特撮作品に対する愛に満ち溢れたものだった。
何よりも本作、怪獣ヤンガリーに対抗する人間達が素晴らしい。ヤンガリーを退治するため、最初に軍用ヘリの編隊が出撃してミサイルを雨あられとぶつける。それでもヤンガリーは死なないので、今度は戦闘機がやってきて市街地のヤンガリーにミサイル攻撃を始める。ところがヤンガリーは磁力を纏っており、誘導ミサイルは軌道を外れてビルを直撃。たちまちビルは爆発炎上した。このままミサイルを撃ち続ければ、大量の死者が出るのは想像に難くない。だが戦闘機はこれに懲りずに、更なるミサイルを乱発。勿論命中したのはほんの三割ぐらいで、残りは全部市街地を直撃した。大したダメージも与えられないのに無茶をするから、結果としてヤンガリーが暴れた以上の被害が巻き起こる。なんと特撮ファンのツボを突いた展開であろうか!(笑)
そしてこれが無駄と分かるや否や、政府は戦闘機を撤退させる。今度は何をするのかと思えば、「T-フォース部隊」という調整中の最新鋭部隊へ出動命令が下る。おお、なんか名前からして最新鋭の兵器でも持っていそうな部隊ではないか。と観客を散々期待させておきながら、登場したのが「ロケッティア」宜しくジェット噴射装置を背負っただけの単なる一部隊に過ぎなかった。しかも最新鋭なのは背中のジェット噴射だけで、攻撃手段はごく普通の銃火器。明らかにミサイルよりも効果が薄く、案の定瞬く間にヤンガリーに倒されてしまう。この駄目具合に対し、「おまえ達はZATか!?」と突っ込まずにはいられないのである。
こんな恐ろしい軍隊の行動に加えて、宇宙船による人工衛星の破壊があったり、第二の怪獣サソリゲスとヤンガリーとの怪獣プロレスがあったりと、とにかく盛り沢山な本作。序盤の展開は緩慢だし、怪獣のCGは質感に乏しいものの、日本の特撮映画が好きな人間なら間違い無く楽しめる快作である。

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