片腕カンフー対空飛ぶギロチン 「評価 A」
片腕のカンフー使いに弟子を殺されたギロチン使いの老人が、復讐を誓って山を降りた。その頃街では後日開かれる格闘大会のために国内外から腕自慢の格闘家が集結しており、老人の仇である片腕ドラゴンの元にも招待状がきていた。そこで片腕ドラゴンは弟子達を連れて会場に向かったのだが、大会の最中、会場にギロチン使いの老人が乱入してきた。
空飛ぶギロチン。鎖に繋がれた円盤を相手の頭上へ飛ばすと、円盤が籠状になって相手の首をすっぽり包み、そのまま首を刈り取ってしまうという恐るべき兵器である。香港や台湾ではこの非現実的ながらも味わい深い武器を用いた映画が幾つか作られており(中には「座頭市対空飛ぶギロチン」なんて際物もあるそうだ)、本作もそれらの内の一つなのだが、空飛ぶギロチン以外にも辮髪を相手の首に絡ませて相手を窒息死させる奴や体を膨らませて打撃のダメージを和らげる奴、果てには自らの腕を伸ばすヨガ使いなんてのまで登場し、その多彩な奥義で映画を盛り上げていた。彼らの戦いぶりはカンフーというジャンルを軽く越えて最早SFの世界に突入しており、まるで「男塾」のような世界が本作の中では展開されている。
一方、そんな連中に対して主人公の片腕ドラゴンは壁を歩くことが出来たりするが至って普通のカンフー使いであり、勿論まともに戦っていては勝ち目が薄い。そこで片腕ドラゴンは真正面からカンフーで挑むことは極力避け、徹底的に策を巡らせて相手を不利な状況へ追いこんでから戦うのである。
例えばムエタイ使いと戦う時には予め床に鉄板を敷き詰めた小屋を用意し、片腕ドラゴンはその小屋にムエタイを誘い込む。そして二人が小屋の中に入ると、片腕ドラゴンの弟子達が家の周囲に火を放つ。それにより床の鉄板が熱くなり、裸足で戦うのが常のムエタイ使いはとても戦える状況では無くなるのだ。何人もの弟子たちが家を囲んでいるのでムエタイ使いは家を出ることもできず、靴を履いている片腕ドラゴンにあっと言う間に殺されてしまう。またギロチン使いの老人と戦う時は舞台に多くの罠を仕掛けていたりと、手段を選ばず勝ちにいく彼の戦法はカンフー映画の主人公としてはなかなかに新鮮である。
(しかしこんな戦法を用いる奴が高名なカンフー使いとされている本作の世界っていったい…)
ヨガ使いの腕がマジックハンド丸出しだったり(関節が曲がらない!)、ギロチンで首を取られた男の服が妙に膨らんでいたりと(理由は言わずもがな)、本作は撮影技術に関してはチャチの一言だが、これもバタ臭い映画の雰囲気と妙に調和しているのでさほど気にならず(単に突っ込む気すら起きないとも言うが)、全編に渡って楽しめる映画である。
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