兜 「評価 A」
未だに日本に忍者や侍がいると思い込んでいる外国人がいるらしい。そしてそんな外国人は皆、侍を忍者同様、人間業を越えた力や術をもつ神秘的な存在として見ているのである。いったい何故こんな誤解がおきたのか? 原因の一つとして、外国が作る忍者や侍映画の演出が誇張に誇張を重ねているからというものが挙げられるだろう。本作もそんな作品の1つで、見事に「侍」の神格化を後押ししているような内容だった。
西暦1600年、日本は東西に分かれ、史上最大の合戦を行っていた。しかし西の豊臣側の武士達は火縄式の鉄砲を大量に仕入れて戦いを挑んでくるので、東の徳川側は苦戦を強いられていた。そこで徳川側の主君家康は、息子の頼宗と家臣の前田に、スペインへ渡って最新式の鉄砲を仕入れてくるように頼んだのであった…と、歴史的には破綻しまくりの内容である。映画の中で頼宗達は2年の年月をかけてスペインに到着したのだから、日本に帰るのにもそれ位かかると考えていいだろう。ということは、頼宗達が帰還するのは1604年!? 1603年に江戸幕府が開いているのだから、とんでもない遅刻である。おまけに日本に帰る途中、海賊に襲われて奴隷にされるわ、負傷した船長を助けるために一旦イギリスへ戻るわで、どうも何のトラブルも無かった行きよりも時間がかかりそうな様子なのだ。
だが、この映画の本当に凄いところはこんなところでは無い。家康の家臣の「前田」が、異常なほど強い男として描かれているのである。バク転して1階から2階に跳び上がるなんてのは朝飯前。なんと、飛んでくる矢を素手で受け止めたり、スペイン国王の命を狙う数十人の刺客を1人で全滅させたり、念力をつかって刀に火を吹かせたりするのだ! 恐るべき人間である。こんなのが味方にいたのならば、家康も使いとしてスペインなんかに行かせないで、こいつを最前線で戦わせたほうがよっぽど勝利は早かったと思うぞ。
いやはや珍妙な映画である。こんな映画に出演していた三船敏郎やショー・コスギは、監督に何も言わなかったのだろうか? だがそんな誇張が非常に楽しいので、良いことは良いのだが。
GO TO TOP!!