マンタ 「評価 D」
大企業が設立した海底研究所では、その道の大物達が会社の資本の元で研究を進めていた。ところが原因不明の事故が発生し、突如研究所は外部との連絡を断ってしまう。そこで会社は後任の科学者らを派遣し、研究の続行と同時に事故の調査も行わせようとした。だが彼らが赴いてみると、何故か研究所の中には人の姿が全く見当たらなかったのである。この事に不審に思いつつも科学者達は研究を始めようとしたところ、マンタの姿をした宇宙人が彼らの前に出現した。
本作は89年、ロジャー・コーマンが「アビス」の公開に併せて製作した便乗映画である。よって「アビス」同様、遠い星からやってきた宇宙人の登場する海底SFになっているのだが、それ以前に本作は未知の存在との交信や研究所内でのAIとの戦いなど、明らかに「2001年宇宙の旅」を意識していると思われる部分が無数に見られ、そしてそれらのリスペクト(パクリ)が悉くコケているのだった。
予算が無いのに無理に「2001年〜」の再現(模倣)をしようとするから、交信シーンで流れるイメージ映像は絵で描いた宇宙の図がズームアップされるだけという大変お手ごろ価格な手法が用いられており、当然神秘性の欠片も感じられない。また研究所を制御するAIとの戦いもコンピューターを力で叩き壊すという、実に男らしいやり方で決着がついてしまう(下手したら研究所の機能が停止して共倒れだぞ)。
こんな風にオリジナルへのリスペクトどころか実質侮辱の域にまで達している作品だが、この映画の凄いところはこれだけに留まらない。話の方もやたらとスローテンポな上にグタグタな出来だったのだ。どうやら海底研究所のすぐ近くに宇宙人の棲家があるらしく、マンタの姿をした宇宙人たちはしょっちゅう研究所周辺をうろついている。これでは研究所の人間達も宇宙人の存在に気づかないはずがなく、「これを外の世界に公表すれば大ニュースになるわ!」と大喜びするのだが、実は会社の上層部は既に宇宙人の事を知っており、政府と結託して秘密を隠し通していたのである。そして秘密を知られたことに気づいた上層部らは、現地の司令官に目撃者を始末するように命じた!
こうして海底研究所を舞台とした密室サスペンスが展開されて行くわけだが、そんなに宇宙人の棲家を外に秘密にしておきたいんだったら、そもそも秘密を漏らすような人間を研究所に配属させたのが間違いだろう。
しかも政府や上層部がそれほどまでに危険視する宇宙人の目的がどんなものかと言うと、何のことはないセガールのいつものアレで、まさしく拍子抜け。
だが、海底を漂っているだけでその目的を達成できるとはとても思えないのだが、果たして宇宙人達は本気で目的を達成しようとしているのだろうか。疑問に思えてしょうがない。
紙粘土細工のような体に赤い眼が際立っているマンタの造型は個人的に好印象だったものの、便乗映画特有の恐ろしさを垣間見るかのような作品であった。
GO TO TOP!!